【インターハイ個人戦（男子）・特集】ＪＯＣアカデミーが２階級制覇、乙黒拓斗が春夏連覇

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

（文＝増渕由気子）

　ＪＯＣアカデミーメンバーが在籍、６月の関東高校大会でエントリー３人にも関わらず全員が優勝し、学校対抗得点も優勝した帝京（東京）。インターハイでもその実力を発揮し、２選手が優勝した。

　50kg級の阿部敏弥、55kg級の乙黒拓斗、66kg級の梅林太朗の３選手がそろって決勝に進出。阿部は敗れて準優勝だったが、乙黒は決勝をテクニカルフォール勝ちし、春の全国高校選抜大会に続いて春夏連覇。さらに昨年の50kg級に続いての２連覇も決めた。来年は３連覇に挑戦する。

　梅林も決勝は鮮やかなフォール勝ちで２年生にしてインターハイを初制覇した。

■55kg級・乙黒拓斗が個人戦ＭＶＰ獲得

　個人戦のＭＶＰには、全試合テクニカルフォール勝ちを収めた乙黒が選出された。長い手足を生かして、高速タックルで相手の足をつかんだら、すかさずグラウンドに持ちこみ、アンクルホールドやローリングで追加点。どの試合もワンサイドゲームで決めてみせた。

　乙黒は「２連覇を期待されていて２年生でできればすごいな、と思っていた。選抜からパワーをつけ、技も組み手も磨きをかけてきたのがよかった」と、春夏連覇や２連覇のプレッシャーを、自分が進化することではね除けた。

　春の全国高校選抜大会では、準々決勝で永田丈治（青森・八戸工大一）に苦戦するなど危ない一面もあったが、インターハイでは、永田にも４分21秒でテクニカルフォール勝ちをおさめ、成長した証を見せた。

　ＪＯＣアカデミーの江藤正基コーチは「乙黒は練習もよくするし研究熱心。相手にダメージが残るまたさきなども使って前回よりも進化していた。全部テクニカルフォールは、その練習の姿勢に尽きます。みんな見習わないと」と、乙黒を選手の模範と称えた。

　個人戦のＭＶＰはここ数年３年生が取ることが多かった。乙黒は「ＭＶＰは３年生がもらうものばかりと思っていたので予想していなかった」と話す一方、「インターハイを２連覇しても、オリンピックで勝てることではない。目の前の大会ひとつひとつを目標に闘い、最後にオリンピックで勝ちたい」と気を引き締めていた。

■春の悔しさをバネにインターハイで優勝…66kg級・梅林太郎

　66kg級は、第２シードの中村剛士（埼玉・花咲徳栄）が棄権し、第１シードの三輪優翔（和歌山・和歌山北）も準々決勝で敗退するなど波乱が起きた。その階級を制したのは梅林太朗だった。

　決勝では、反対ブロックから上がってきた１年生の井筒勇人（千葉・柏日体）を豪快に持ち上げるなど派手な技からフォール勝ち。会場を存分に沸かせてみせた。

　悔しさをばねに勝ち取った優勝だった。３月の全国高校選抜大会では、同門のＪＯＣアカデミーの阿部、乙黒が優勝したが、梅林だけ準決勝で中村に負けて３位だった。梅林は「アカデミーの２人が優勝して、自分だけ負けた。京都では絶対に勝つと思ってやってきた」と悲願達成だった。

　春に負けた中村が負傷のため欠場と聞き、梅林は複雑な心境になったという。「ライバルではありますが、花咲徳栄にはいつも出げいこでお世話になっている。中村選手は３年生で最後のインターハイで悔しい思いをしていた。中村選手の分もと特別な想いがありました」。梅林は先輩の無念も背負ってマットに立っていた。

　決勝は１年生が相手と予想外の選手だったが、「相手がだれであろうと最後まで気を抜かないようにした」と全力で闘い、あっという間にフォールした。春夏あわせて高校初のチャンピオンに輝いた梅林。その成長の理由には、グレコローマンを練習に取り入れたことで体幹が強くなり、組手負けすることもなくなったことが大きい。江藤コーチも「グレコをやったことで、フリースタイルの幅が広がった」と評した。

　次の目標は今月下旬の世界カデット選手権（ボスニア・ヘルツェゴビナ）。梅林は「去年は銅メダルだった。今年は金メダル目指して頑張りたい」と抱負を話した。

---