※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 50kg級を制した松井稜(岐阜・中京)
全国高校選抜大会準優勝という悔しさは、インターハイまでの4ヶ月間、忘れることはなかった。その試合の内容は、互いにけん制しすぎ、コーションによるポイントで1-2という状況。それでも攻め切れず、最後、強引に仕掛けたがぶり返しを抑えられてフォール負けという最悪の内容だった。
もどかしい試合に、若山真毅コーチから「攻めることができなかったというのは、理由にならない」と、かなり反省を促されたと言う。
若山コーチによると、攻撃力も体力面も「十分にある」選手。だが、中学時代からのライバル・阿部との試合になると動きが急変してしまう。互いに手の内を知りつくしていることから、「体がガチガチに硬くなって技が出せない。(得意の)ハイクラッチに入れず、何もできなかった」と敗戦を振り返った。
同じ轍(てつ)は踏みたくない! そう決めてインターハイの決勝で再び阿部と対峙した松井だったが、「恐怖心が少しあって、1ピリオド目は見合ってあってしまった」と、選抜と同じように攻めきれず、松井がコーションを受けて0-1と先取点を譲ってしまった。 逆転勝ちしガッツポーズ!
松井の勇気が恐怖心を上回った。残り20秒、松井がギアを入れ替え、タックルを2度決めて、計4点を積み重ねて5-3と逆転しライバルを下した。松井は「高校に入って初めて阿部選手に勝てた」と満足そうに話した。
普段は厳しく指導している若山コーチも「よくやった。調子もよかったし、優勝するためにここに来ていたと思う。その目標が達成できてよかった」と称えた。
松井、阿部ともに2年生。ここのライバル関係は続いていくだろう。若山コーチは「2年生同士で、この先何度も闘うことになるでしょう。国体も50kg級に出場します。そこでも優勝して、この階級で一歩抜けた存在になってほしいです」。
松井も、「同じような日がまた来ると思います。けれども、次もまた自分が勝ちます」と阿部への連勝を誓った。