※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子) 入江くみ(福岡・小倉商)と辻栄樹監督
ともに日本トップ選手の姉を持つ。入江の姉は48kg級の入江ゆき(自衛隊)で、今年のアジア選手権(カタール)で金メダル。53kg級の入江ななみ(九州共立大)は、一昨年の全日本選抜選手権51kg級で優勝し、現在も活躍中。対する川井の姉も、今年の世界選手権63kg級代表の川井梨沙子(至学館大)と一流選手だ。ともに「姉に追いつけ、追い越せ」と練習を積んできた。
試合は、最終的に10-9となり、終盤は取って取られての展開だったが、序盤は入江が一方的に主導権を握っていた。タックルからの攻撃などであっという間に5点差。3連覇に向けて死角なしと貫録の第1ピリオドだった。
だが、小倉商高の辻栄樹監督は川井の後半の追い上げを懸念していた。「川井選手は努力型で体力もある。入江は少し貧血気味で後半の体力に不安があった」。さらに入江自身が「前半ができすぎて5点差。少し安心してしまった」と振り返ったように、心にすきが出た。第2ピリオド、川井の猛攻が始まり、お互いに点を取り合って9-5。 決勝で闘う入江
息をのむ終盤の攻防。2人そろって得点版を確認すると最後のバックポイントが効いて10-9と1点差で入江の勝利だった。
入江は「準決勝までは思い通りにできたのに、決勝戦で得点を取られたので今日は60点」と話したが、女子史上初の3連覇は「うれしいし、誇りに思います」と笑みを見せた。
インターハイに女子が参入して今年で3年目を迎えた。中学の成績を考えると、入江の3連覇を予想した人は少なかったかもしれない。なぜなら、スター選手の姉たちに比べると入江の中学時代の成績は、やや落ちるからだ。「中学では2位どまりだった」と振り返るようにタイトルにあと一歩の選手だった。
辻監督は「末っ子で少し甘えがあった選手でした。自宅通いでしたから、寮生活をしている選手に勝つには何が必要なのかを指導しました」と、私生活からの見直しをはかったことで、高校生で花開いた。
先月はアジア・ジュニア選手権(ミャンマー)で国際大会での金メダルを獲得。姉たちに続けと、国内外で成績を残せる選手に成長した。「姉たちの活躍が刺激になっています。私も早くシニアで活躍したい」。12月の全日本選手権は、3姉妹そろっての活躍を見せられるか―。