※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 新生霞ヶ浦を指揮した入江和久監督
“2020年東京オリンピックの星”と注目される山崎弥十朗を擁する埼玉栄は、下馬評通りの活躍で決勝に進出と言えよう。一方、今年3月で名将・大澤友博監督が勇退し、入江和久新監督の下で新体制となった霞ヶ浦は、高校王者の実力を持つのは、3月の全国高校選抜大会120kg級で優勝した冨栄雅秀の一人のみ。
しかも、学校対抗戦のブロックは、昨年2位の鹿屋中央(鹿児島)や、いなべ総合学園(三重)など実力校ばかり。春の全国高校選抜大会は関東予選で負けて出場できなかっただけに、厳しい闘いが予想された。
だが、大澤監督時代、冬や春の成績が悪くても、インターハイに照準を合わせてくるのが霞ヶ浦。その伝統は守られていた。入江監督は「スター選手がいないから、誰かが負けたら、誰かが取らなくてはいけないと、考えてやりくりした」と総力戦で挑み、3回戦のいなべ総合学園、準々決勝の和歌山北(和歌山)、準決勝の飛龍(静岡)はすべて4-3と薄氷を踏む思いで勝ち抜いた。
■2位は悔しいが、「強いチームも倒せましたし、躍進はできたかな」
「霞ヶ浦という学校の伝統がある。競った試合になったら、おまえたちが勝てる」と入江監督は選手を鼓舞したと言う。だが、決勝の埼玉栄戦ではついに力尽きてしまった。相手は、60・66・84kg級と強豪選手を並べてきた。120kg級の冨栄は確実に勝てると見込み、“50・55・74kg級に勝って4勝を挙げる”のが勝利のセオリーだと思われた。 新生霞ヶ浦の柱となるか、小川翔太(50kg級)
その思惑は外れた。「2月の関東高校選抜でも2人は(今日と)同じ選手に負けていました。2年生の内山に頼らず、リベンジをを果たさないといけないのに、簡単に負けてしまった」と、3年の主力メンバーが負けたことを敗因に挙げ、岩本主将も「僕がふがいない試合をしてしまった」と悔しそうに話した。
準優勝という結果に、入江監督は「悔しくて仕方がない」と本音。けれども、大澤前監督が勇退し、新入生もゼロというチーム編成での準優勝に、多くの関係者から「正直、霞ヶ浦が決勝まで上がってくるとは思わなかった」とのねぎらいの言葉をかけられたそうだ。大澤前監督は、霞ヶ浦の外部コーチとして今でも指導を仰いでいるが、インターハイ直前の7月は、ほぼ霞ヶ浦単独で仕上げてきたそうだ。
「その中での準優勝…。強いチームも倒せましたし、躍進はできたかな」と生徒を褒める一面も見せた。
監督として初めて臨んだインターハイを無事終えたが、入江監督の気持ちは休まらない。「3年生が抜けると2年生3人しかメンバーがいない」。このままだと新チームの団体戦が組めないのだ。「是が非でも新入生を入れて、来年、またこのインターハイに戻ってきたい」と入江監督は、スカウトにも力を入れて強豪チームとしてのレベル死守を誓った。