※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
いくつもの収穫を得て帰国したフリースタイル・チーム
悪天候のため、ワルシャワからアムステルダム行きのフライトが大揺れ。吐き出す子もいたそうで、スキポール空港へは、着陸態勢に入りながら結局降りられず、北部の空港で約3時間待機してから同空港へ。日本への到着も3時間遅れの到着というアクシデント。あまりの揺れに、選手一同、死も覚悟したという“ハードな遠征”だった。
57kg級で優勝した高橋侑希(山梨学院大)は、1、2回戦をテクニカルフォールで快勝するなどタックルを武器に攻撃的なレスリングで表彰台の頂点に立った。「よかったと思う。自分のペースで試合ができた。去年の世界選手権以来の国際大会でしたが、動じることなくできました」と振り返る。
参加選手を見て、世界選手権でメダル候補に挙がる強豪ばかりではなかったことが、闘志に火をつけてくれた。「強い選手が出ていなかったので、世界選手権で勝つためにはここで優勝しないといけないと思った」という。全4試合で失点は決勝の1点のみ。「足をほとんど触らせなかった。防御面も強くなっているのかな」と手ごたえを口にしたが、
取りこぼしなく、しっかりと結果につなげたことで、世界選手権まで「けがをせず、ライバルの研究もしっかりしていきたい」と気を引き締めた。
■確実な成長を実感…鈴木豊監督
また、61kg級では鴨居正和(自衛隊)が銀メダルを獲得した。初戦で今年の欧州大会2位、2回戦で2006年の55kg級世界王者と強豪を撃破しながら、決勝では残り15秒で逆転される悔しい結果だった。「混乱してしまい、守るかどうするか悩んでしまった。体が浮いたところ逆にやられた。詰めの甘さが出た」と反省しきりだ。
同じく銀メダルを獲得した74kg級の高谷惣亮(ALSOK)は、準決勝までの4試合をすべてテクニカルフォールで勝ち上がり、「タックルがずばずばと決まりました。パワーもスピードもさらに付いていると実感できた」と納得の表情。
決勝ではアリレザ・ガセミ(イラン)と対戦。高谷のタックルを受けないよう構えまで変えてきた相手に0―4で敗れた。「僕に特化した構えで来られました。こういう構えの相手にどうするか、対策を練っていきたい」と、世界選手権に向け課題を挙げた。
65kg級の石田智嗣(警視庁)は銅メダルを獲得したが、「今のままでは世界でメダルを獲得するまでいかないことを、体で感じられたのが一番の収穫」と厳しい表情。今年のアジア選手権優勝のイラン選手に敗れて7位だった97kg級の山口剛(ブシロード)は「すごく研究されていた。攻めのバリエーションを増やす必要がある」と話した。
鈴木豊監督は「しっかりとメダルも取ってきたし、収穫があった。みんな良く攻めていたし、失点も少なかったと思う」と選手の成長を実感した。テークダウンからグラウンド技をかけるタイミングも以前より早くなっているという。
今回は5階級のみの出場ながら、国別対抗得点で3位に入る健闘を見せたフリースタイルチーム。大一番まで残り約1ヶ月となったが、鈴木監督は「まずはしっかり体を休ませる。8月3日からの強化合宿で力をつけたい。世界選手権本番で力を発揮できるよう、仕上げていきたい」との計画を話した。勢いを大舞台につなげたいところだ。