※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 2年連続の世界選手権出場を決めた高橋侑希(山梨学院大)
森下とは高校時代から勝ち負けを繰り返してきた最大のライバル。2連勝することがどれだけ大変なことかを高橋の涙が物語っていた。ライバルは森下だけではない。高橋にとっては試練のトーナメントと言える歯ごたえのある組み合わせだった。
初戦は2012年ロンドン・オリンピック銅メダリストの湯元進一(自衛隊)、準決勝は昨年11月の全日本大学選手権で敗れている学生王者の中村倫也(専大)、そして決勝は長年のライバル、森下。過酷な組み合せだった。
それでも、「天皇杯(全日本選手権)でも初戦が湯元選手だった。強かったけど、若手が台頭しないと日本のレスリングが終わると思って集中した」と、初戦から全力を出し切って勝利。敗れた湯元は引退を示唆し、引導を渡した形となった。 プレーオフで勝ち、応援席へアピールする高橋
だが、体調も万全ではない中、強豪選手と全4試合を勝ち抜いて見せ、内容も素晴らしかった。昨年は優勝したものの、決勝では微妙な判定がチャレンジによって変わり、すっきりとしない部分もあった。
今回は森下を攻めたてて主導権を常に握り、森下の終盤のラッシュもうまくさばいてみせた。「今回はチャレンジなしで、きっちり勝つことができました。世界選手権ではメダルを取って自分がオリンピックに行きます」。試合前の体調不良、そしていばらのトーナメントを制した高橋は、この大会で一段と成長したことだろう。
これを自信に変え、2度目の世界選手権で一気にオリンピックを決められるか。