※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 41年にわたって大会を支えてくれた体育館に、地元関係者が感謝の気持ちを伝えた
建て替えのため、現在の体育館での全中は今年の第41回大会をもって最後となった。全中は、ほぼシニアに近いルールで行われる中学レスリングの最高峰の大会。これまで、オリンピックや世界選手権代表の数多く輩出した。第1回大会の参加はわずか64人だったが、現在では毎年500人を超える選手が参加し、毎年熱闘を繰り広げてきた。
全国中学生連盟の沼尻久会長に体育館の思い出を振り返ってもらうと、「12歳上で父親のような存在だった兄(故沼尻直・前会長)の手伝いから始めて、長い年月がたちました。台風の影響で計量の時間を早めたり、女子の参入に苦労したりと、いろいろなことがあった」と懐かしそうに振り返った。
その中で一番印象に残っている大会は「やはり2011年の東日本大震災の年です」と言う。「震災からわずか2カ月、しかも水戸は被災地でもありました。この体育館も5月の時点で支援物資が置いてあり、開催が危ぶまれましたが、『開催する』と言った以上、県議会にかけあって、支援物資を移動してもらいました。あの時が一番苦しかったです」と続けた。 幾多の苦労を乗り越え、大会を続けて来た全国中学生連盟の沼尻久会長
新しい体育館は、茨城県のビックプロジェクトとして約85億円の予算を使って最新式の体育館として生まれ変わる。現在のマット4面の広さから6面以上の広さになり、レスリング専用道場も併設される予定だ。
地元水戸市出身で、同大会女子4人目の大会3連覇を達成した阿部千波さんは、今年3月に至学館大を卒業し、4月から鹿島学園高校の職員として勤務。同校のレスリング部コーチを始めた関係で、今年7年ぶりに全中を訪れた。「私が闘ってきた時とまったく変わらない風景です。わたしがレスリングを始めた場所こそ、水戸スポーツセンターでした。その時、私は4歳。この記憶だけは鮮明に残っています。地元出身で、選手宣誓もした3年生の時に大会3連覇できたことが一番の思い出です。(新しい体育館が)全中の会場として定着し、みんなに愛される体育館に生まれ変わってほしいです」と、思い出と希望を話した。
来年以降の大会は水戸市民体育館で行われる。
![]() 体育館全景 |
![]() レスリング会場風景 |