※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 選手から胴上げされる同志社大の三村和人コーチ
前田喜代範監督は「選手たちが本当によくやってくれた。私の仕事が忙しかったため、指導面は三村コーチにほとんどお願いしてしまった。(同コーチは)京都インターハイの準備がある中、東京遠征にも帯同してくれた。今回の優勝は選手自身と三村コーチのお手柄です」と称えた。
49季ぶりの復活劇だった前回の優勝は、コーチ陣が“奇跡の優勝”と称したほど、下馬評は高くなかった。対して今回の戦力は同志社大が頭一つ抜けていたことは明白。中京学院大には4-3と競った試合だったが、ほかの試合は王者として余裕のある闘いぶりを見せた。三村和人コーチは「前回はまぐれ勝ちもあった優勝ですが、今回は層も厚くなり、穴だった階級に即戦力の新人が入って予定どおりの展開ができた」と、盤石の闘いができたことに満足そう。
即戦力として活躍したのは昨年のインターハイの学校対抗戦と個人戦でダブル優勝を果たした埼玉・花咲徳栄高出身の田辺雄史と、全国高校選抜大会の学校対抗戦準優勝の経歴を持つ群馬・館林高出身の萩本龍の2人だ。65kg級の全試合に出場した田辺は4戦全勝。57kg級の萩本も3勝1敗と予想以上の好成績で優勝に貢献した。 4戦全勝で同志社大を支えた1年生の田辺雄史
■関東の“血”が加わり、チーム全体のレベルが向上
前田監督や三村コーチはそれぞれ仕事があり、毎日練習に参加できる専属コーチは不在。学生自身の練習密度が一番重要になる。その中で、一昨年に即戦力ルーキーとして入った70kg級の和智健悟(茨城・霞ヶ浦高卒)や86kg級の榎本凌太(埼玉・花咲徳栄高卒)の力も大きく、4年生が就職活動で不在の時の練習では、率先してチームを引っ張ってきた。
三村監督は「わたしも練習に顔を出せるのは月2回が限度。けれども、和智や榎本ら関東で競ったレスリングを知っている学生が中心となって、いい練習が積めるようになった。怒ることもなくなりました」と、チーム全体のレベルが底上げされたことを実感している。さらに、「選手を送ってくれた霞ヶ浦高校や花咲徳栄高校の先生方にこの場を借りてお礼を申し上げたい」と感謝の気持ちを述べた。
若い戦力で秋春連覇を成し遂げたため、さらなる連続優勝に期待がかかるが、福田耕治総監督は「優勝はうれしかったけれども、今回は他の大学が崩れてくれた面もあった。特に立命館大はけが人の影響が大きかったと思う」と、ライバルたちが100パーセントの仕上がりでなかったことを強調した。それだけに、秋のリーグ戦に向けてはさらなるレベルアップが必要だ。
57kg級で昨シーズンのレギュラーを務めた羽田圭佑主将は、就職活動を優先したため、今回は即戦力の1年生、萩本にレギュラーを託した。秋季は就職活動を終えている可能性が高く、「次回は自分が試合に出て優勝したい」と、レギュラー奪回に燃えている。
26年ぶりの3季連続優勝がかかる秋季リーグに向け、部内での切磋琢磨でレベルアップすることは十分に可能だ。昨季の49季ぶりの悲願優勝から一転、今回の優勝は同志社大の黄金時代を予感させる圧巻の優勝だった。