※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=保高幸子)
日本ウェルネススポーツ大学のレスリング部が5月20日(水)からの東日本学生リーグ戦に初参戦する。昨秋に創部を発表し2000年シドニー・オリンピック銀メダリストの永田克彦監督率いるチームが、いよいよベールを脱ぐ(注=二部リーグは21日から)。東日本学生リーグ戦に新しい大学が参入するのは、 2002年の神奈川工科大(2シーズン参加し、休部)以来、13年ぶりとなる。 デビュー戦を控える日本ウェルネススポーツ大学。右端が永田克彦監督
■粗削りだが体が強く、伸びしろ十分のモンゴル選手
モンゴルからの留学生は、40名の希望者の中から選抜された精鋭。来日して1ヶ月のためまだ言葉は通じない。日本語が分からない分はゼスチャーや実際にやって見せての指導となる。
遅咲き選手としてシドニー・オリンピックで銀メダルを獲得した永田監督は「みんな粗削りで、テクニックの面では日本の選手にかなわない。しかし、まじめだし体が強い。伸びしろがある分、どんどん吸収している」という。日本語とモンゴル語は文法が似ているので、覚えるのは早いと言われており、半年もしたら言葉の壁もなくなるだろう。
現在はマット1面だが、7名しかいないため休むことができない。連日、休むことのできないパワフルな練習が行われている。
永田監督の期待は65kg級にエントリーしたツェンド・ブレントクトホ選手。手足が長く、男子フリースタイル74kg級でオリンピック3度優勝を達成したブバイサ・サイキエフ(ロシア)のようなレスリングができるように育てるつもりだ。
また、97kg級の選手で、今回は125kg級にエントリーのアムゴラン・ガンバト選手については「グレコローマンでも強くなると思う」と自信を見せる。 母国を離れてレスリングに打ち込む6人のモンゴル選手と1人の日本人選手
唯一の日本選手、125kg級の山本晋也は、埼玉・花咲徳栄高時代の2012年にインターハイ120kg級で優勝するなど活躍し、兄の山本康稀(同高~日大)とともに期待されていた選手。しかしレスリングへの熱を失ってしまい、3年生の途中で高校を中退。地元の北海道に戻って就職したが、3ヶ月ほどして「もう一度レスリングをしたい」と一念発起。
通信制で高校を卒業し上京。ちょうどウェルネス大レスリング部創設のニュースを見て学校へ問い合わせたという。「高校1年生の気持ちです」と笑う山本。2年間のブランクがあり、まだまだ体は戻っていない。
復帰戦となった先月のJOC杯(ジュニア・フリースタイル120kg級)では、2回戦で昨年の高校五冠王者の山本泰輝(静岡・飛龍高~拓大)に0-13のテクニカルフォール負け。「30秒でばててしまいました。駄目ですね。でも、今はレスリングが楽しい。11月の全日本大学選手権までには体を戻したい」と話し、毎日2時間をかけての都内からの通学も苦にしていない。
永田監督の今回のリーグ戦の目標は一部リーグに上がること。「二部リーグで優勝する力はある」と自信を見せる(注=一部リーグの東農大が棄権のため、二部リーグ優勝で自動的に昇格)。一部リーグとの差である技術はこれから埋めていき、5年後の2020年東京オリンピックの年に学生界のトップを目指す。
さらに、「彼らが2020年のオリンピックにモンゴル代表として日本にがい旋してくれるよう育てたい」と目標は高い。ウェルネス大学が、学生レスリング界のみならず世界のレスリング界を大きく揺さぶる存在になるか。リーグ戦でその可能性を見せてほしい。
![]() 今は柔道場と二分しての練習場 |
![]() 練習を見守る永田監督 |