※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子) ジュニアのMVPに選ばれた入江ななみ(九州共立大)。左は栄和人強化本部長
シニアでは53kg級で活躍し、2年前の全日本選抜選手権では51kg級で優勝。世界選手権代表候補にも挙がった選手。そのためか、入江は「内容はまだまだだったが、ジュニアの大会でしたので優勝しか狙っていませんでした。この優勝で満足はしていません」と、シニアでも活躍する自覚をのぞかせた。
初戦の2回戦は2012年の全日本女子連盟年間MVPの倉舘愛(日大)と対戦。交通事故によるけがで1年以上ブランクがある相手に終盤まで1-0と接戦に持ちこまれたが、入江は「全日本合宿でスパーリングをしました。研究されていると思っていたので、私も相手のことを研究してきた」と、短期間でパワーアップした自負があった。終盤、スタンドからの攻撃で4得点し、5-0で元女子連盟MVPを倒した。
決勝の相手は、ジュニアの部に初参戦ながら入江と同じようにすでにシニアでも実績をもつ向田だった。「何度も闘ったことがある相手で、負けたこともある。試合のたびに緊張する」と気合を入れて臨んだ入江は、先日の全日本合宿での経験を生かし、「失点が少なくし、自分から攻めるレスリングをする」ことを実践。昨年の全日本選手権の3位決定戦に続いて向田に2連勝した。
■昨年3月のワールドカップ(東京)出場で飛躍
入江は女子レスリングで有名な東京の安部学院や愛知の至学館などの高校には進学せず、大学も有力選手が集まる東日本の大学には進まなかった。「地方にいても強くなれる。ビデオ研究をしっかりして、練習ではライバルに構えなどが似ている選手をライバル本人だと思い込んで練習しています。全日本合宿にも呼んでいただけるので、最新のレスリングも吸収できるし、ハンディを感じたことはありません」ときっぱり。今回もライバルのビデオ研究をしっかりして、相手の動きを予測できたそうだ。 昨年12月の全日本選手権で吉田沙保里8ALSOK)に挑んだ入江
「初めてシニアの国際大会に出て、緊張もあったけど、ワールドカップのレベルを感じ、本物の世界を見ることができました」と、ステップアップになった。同時に、「吉田選手の代わりではなく、自分が日本の主力選手として(国際大会に)出られるようになりたいと思った」と転機を振り返った。
これで夏の世界ジュニア選手権(ブラジル)が楽しみなところだが、入江は前述したとおり、すでにシニアのトップ選手。目標はあくまでもシニアだ。「今回55kg級に出場しましたが、53kg級で吉田沙保里選手(ALSOK)を倒してオリンピックに出たいです」と、来年のリオデジャネイロ・オリンピック出場を狙っている。
今は試合の経験が積みたくて仕方がない様子。「4月下旬にはJOC杯ジュニアオリンピックに出て、直後のアジア選手権(カタール)にも出場します」と、今大会の連覇を弾みにして6月の全日本選抜選手権に向けて試合漬けで強化を計る予定だ。全日本選抜選手権での目標はもちろん「吉田選手を倒して優勝です」と力強く話した。