※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
来日したフランス・チーム
自衛隊の元木康年コーチは、世界チャンピオンを生んでいるフランス・チームを「体力もあるし強い。オリンピック・チャンピオンと肌を合わせる機会はそうそうあるものではない。自分達から外国へ行けば、ばく大な金がかかる。こうした貴重な機会をもらえてありがたい」と話し、飛躍の絶好の場と位置付ける。
選手には「まず外国選手の力を感じてほしい。次に自分達の組み手が通用するかどうか。通用しないとしたら、何が足りないのかをしっかり学んでほしい」とリクエストした。
外国チームが日本に来て練習する場合、パワーではまさっていてもスタミナで劣る選手が多いためか、練習の途中からマットサイドに座り込む選手が出てくるのが普通。今回のフランス・チームはそんな選手はおらず、「練習の最後までしっかり練習します。驚いています」と元木コーチ。
7日の午後のマットサーキットの練習でも、全体練習のあとにフランス・チームだけで練習を続け、寝坊して練習に遅れた2選手にペナルティーの追加練習を課すなど、日本式(?)のやり方。「世界チャンピオンでもオリンピック・チャンピオンでも、まじめです。こうした勤勉さを学んでほしいですね」と話した。
昨年の85kg級世界王者のメローナ・ヌモンビとスパーリングをした重量級の期待のホープ、80kg級の角雅人(自衛隊)は「力でぐっとくることはなく、テクニックがすごいと思った。がんがんくることはなかったけど、受けて流す技術がすごい。こちらの力が出せないような動き」と、その強さを評す。 85kg級世界王者のメローナ・ヌモンビに指導する自衛隊の元木康年コーチ
■「毎日が勉強です」とフランスのムリエール監督
フランスのパトリック・ムリエール監督(1987年世界選手権グレコローマン57kg級優勝)は、味の素トレーニングセンターの練習環境を「素晴らしい」と称賛。フランス・チームは「ロシアやベラルーシのみならず、アジアの各国やキューバなどにも遠征して世界のレスリングを学んでいる。2020年にオリンピックが行われる日本に来ることは、とても価値あることだ」と来日の目的を話した。
オリンピックや世界選手権で優勝選手を輩出しているのだから、格としては日本より上と思えるが、「日本にも強い選手がいる。特に軽量級。どの国にもよさがある」と、“上から目線”の姿勢はなし。今回連れてきた選手は、6月の欧州大会(アゼルバイジャン)や9月の世界選手権(米国)の代表候補の一線級チーム。「日本選手の勤勉さを学びたい。毎日が勉強だ」ときっぱり。
ムリエール監督は1992年バルセロナ・オリンピックの翌年からフランス・チームの指揮を執っているが、世代交代のため、来年のリオデジャネイロ・オリンピックを最後に監督から退き、今回参加しているクリストファー・ゲノ・コーチにバトンタッチすることが決まっているという。「監督としては(東京オリンピックに)参加できませんが、協会役員として参加します。日本なら素晴らしい大会になるでしょう。2020年を楽しみにしています」と、日本でのオリンピックを期待した。
![]() トレーニングする北京オリンピック王者のスティーブ・ゲノ(中央) |
![]() けんすいするメローナ・ヌモンビ |
![]() 休けい時間に組み合いを始めたヌモンビ(左)とグエノー |
![]() パトリス・ムリエール監督(左)とクリストファー・グエノー・コーチ |