※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) リベンジ&初優勝の成國琴音(右)と母・晶子さん
“パワーレスリング”でどんどん前に出た成國は、中盤にはローリングを乗られてあわやフォール負けの体勢に持ちこまれる大ピンチもあったが、必死にエスケープし、最後は振り切った。成國は「去年は残り4秒で追いつかれてラストポイントで負けた。今年こそと思っていた。中学時代では一度も優勝できなかったので、勝ててうれしい。やっぱり表彰台の一番上はいいですね」とホッとした表情で話した。
母は元世界チャンピオンの旧姓飯島晶子さんで、兄・大志(三重・いなべ総合学園)は3月下旬に行われた全国高校選抜大会(新潟市)の個人60kg級で復活優勝を遂げた。一見すると、“レスリングエリート”が順当勝ちしたように見えるが、決してそうではない。小学校6年生最後の全国少年少女選抜選手権(2012年)での優勝のあと、中学時代はビッグタイトルに縁がなかった。
兄が男子史上5人目の全国中学選手権3連覇や史上8人目のインターハイ1年生チャンピオンなど記録を打ち立て、同門には中学史上初の全国6冠や世界カデット選手権3連覇の加賀田葵夏がいて、成國は常に比べられてきた。 昨年11月の全国中学生選抜大会決勝。中学3年間を全国大会無冠に終わり、天を仰いだ成國(青)
■勉強では兄を圧倒的にしのぐ成績!
レスリングでは今のところ、兄の方がいい成績を収めているが、私生活まで見ている晶子さんによると、「勉強では琴音が大志を圧倒的にしのいでいる」そうだ。成國は、中学時代は特進クラスで、この4月に入学した高校では、成績上位者で構成されているクラスに在籍。カリキュラムもハードで、朝テストが加わり、そのあとに7時間授業。そして大量の宿題が毎日出る。
勉強だけで24時間が終わってしまいそうな内容なのに、これからは、朝練習、朝テスト、7時間授業をやってのゴールドキッズでの練習。そして夜中の2時まで宿題という生活が毎日続くという。
晶子さんは「見ているこちらが辛くなって、レスリングをやめて勉強に専念してはどうか、と提案したこともあった」と言う。それでも一度も「やめる」と言ったことはなく、これまで文武両道を貫いてきた。
次の試合は今月末のJOC杯ジュニアオリンピック(横浜市)。成國は「しっかり鍛えて、そこでも優勝できるようにしたいです」と、2大会連続優勝を視野に入れた。梅が満開だった新潟で兄が復活優勝し、桜満開の舞鶴で妹が初優勝。兄妹が2週連続で全国タイトルを取るという成國家にとってこの上ない春だった。
今夏はともに舞鶴でのインターハイを目指す。高校生最高峰のイベントで、兄の大志とともに兄妹優勝を飾ることができるだろうか。