※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子) 決勝の第2ピリオド、勝負をかけた三輪優翔(和歌山・和歌山北)
吉田は昨年の同大会と国体を制し、インターハイも2位。今年こそ高校三冠王に挑戦できるほど地力がある選手で順当勝ちと言えたが、66kg級は昨年の高校三冠王者の藤波勇飛(三重・いなべ総合学園=現山梨学院大)が抜け、混戦が予想されていた。
ベスト4には、中村剛士(埼玉・花咲徳栄)、梅林太朗(東京・帝京)、尾形颯(埼玉・埼玉栄)と関東勢が席巻。三輪は唯一関東ブロック外で勝ち残った。三輪は「今大会、優勝できると思って臨んでいた。決勝の中村選手には、昨年のインターハイの学校対抗戦でも勝っていた。あの時は内容が今いちだったので、今日は自分から攻めて勝とうと思って臨んだ」と、新2年ながら優勝する気持ちでマットに上がった。
序盤は中村に攻め込まれた。タックルなどのアタックを2度受けて0-4でハーフタイム。中村は昨年のインターハイの学校対抗戦と個人の両方で決勝の舞台に立ち、大舞台を経験していたが、三輪は高校に入って初の大舞台。前半を終えた時点で、中村に分があると思ったが、和歌山北陣営はまったく気にしていなかった。 三輪(右)と74kg級優勝の吉田隆起、中央は森下浩監督
すると、第2ピリオドの中盤から「そろそろ決めに行こうと思った」と三輪が“ギア”を突然入れ替えた。両足タックルでテークダウンと奪うと、後半にも再び両足タックルで2点。4-4として、ラストポイントによって逆転した。「リードされていても、まだ大丈夫だと思っていました。今日は攻めて勝てたので、自分のレスリングが80%できました」と会心の攻撃だった。
学校対抗戦は、和歌山県勢初の3位に入賞した。中量級の柱として3位の立役者だった三輪は「団体も個人もメダルが取れた。とても幸せでした」と笑顔。三輪を大舞台で勝てる力を付けさせたのは、1つ上の先輩で74kg級優勝の吉田の存在だ。
「隆起先輩が、全国で優勝してすごいと思ったし、自分もそうなりたいと思った」。憧れの先輩に追いつけと努力した三輪が、その先輩と同じ金色のメダルをかけて笑顔で写真に納まった。