※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子) 霞ヶ浦の大澤友博監督(左)に最後の全国優勝をプレゼントした冨栄雅秀(茨城・霞ヶ浦)
霞ヶ浦の監督として有終の美を飾りたかったが、学校対抗戦は関東予選(関東高校選抜大会)で埼玉栄(埼玉)に阻まれて出場できず。個人戦では6選手が出場したが、決勝に残ったのは関東予選120kg級1位の冨栄雅秀のみ。チームは厳しい闘いをしいられていた。
冨栄は「みんな途中で負けてしまって、自分が取らないと示しがつかないと思った」という責任感をもってマットへ上がった。その気持ちが闘いに現れ、決勝は姉石慶一(岩手・宮古商)をわずか32秒でマットに沈めてフォール勝ち。初戦から全試合第1ピリオドでフォール勝ちだった。
同階級は昨年、山本泰輝(静岡・飛龍)の独断場だった。大砲が抜けて本命不在と言われたが、冨栄がぶっちぎりの強さで勝ち抜き、“ポスト山本”に名乗りを上げた形だ。「優勝できたのは、大澤先生、入江先生、福田(貢)先生の指導とOBの先輩たちが応援してくれたから」と振り返ったが、一番の特効薬になったのは大澤監督の激励だった。 最後の全国優勝をかけ、冨栄にアドバイスする大澤監督
冨栄は大澤監督の指導を受けたくて千葉から茨城の霞ヶ浦に入学した生徒だ。高校最後のシーズンを前に退任してしまう寂しさがあるため、1分でも長く指導を受けたいところ。大澤監督がセコンドについた場合、ハーフタイムにセコンドの指示を受けられる。しかし、その機会がなかった。「受けたかったんですが…。全力で闘って、全試合第1ピリオドで終わってしまったので、ハーフタイムなかったんですよね」と冨栄は複雑そうに苦笑いを浮かべた。
大澤監督が不在になっても、今年の重量級で白星街道を走り抜く覚悟はできている。「今シーズン全部の試合で第1ピリオドでのフォール勝ちし、高校五冠王を達成したいです。今年は行けると思います」。大澤魂を受け継ぎ、今後は入江和久・新監督と二人三脚で高校界の“記録”に挑戦する。