※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
段別の部スタートで参加選手の増加が見込まれる全自衛隊大会
近藤務企画委員長は「去年は30選手を超える階級もあったが(74kg級が32選手)、体育学校でレスリングをやっていたOB選手と、自衛隊に入隊してからレスリングを始めた選手とでは、やはり実力差がある。初心者にメダルを目指して参加してもらうには、部門を分ける必要がある」と、段別の部創設の理由を説明する。
全日本選手権や国体に出場した選手は3段を持っているので、3段以上の部と2段以下の選手を分け、ビギナーには同じレベルの選手間で闘ってもらい、メダルを目指して参加してもらうことにした。キャリアの浅い選手や、主に体力づくりを目的にレスリングをやっている選手が、世界選手権に出場したことのある選手と闘うことがなくなるわけで、来年以降の参加選手の増加につなげたいという。
近藤委員等は「今回はレスリングOBのいない宮崎・新田原基地からの参加もありました。段別の部がスタートしたことを広め、多くの参加につなげたい」という。
■全日本トップ選手が審判に挑戦!
今年の大会には昨年の仁川アジア大会の銅メダリストの高塚紀行選手(男子フリースタイル61kg級)や全日本選手権2位の赤熊猶弥選手(男子フリースタイル86kg級)ら現役のトップ選手が“マットへ上がった”。といっても、選手としてではなく、審判員として。
10年くらい前までは、体育学校の現役選手が審判をやっていた。その後、大会規模が大きくなったことと、東日本学生連盟の「学生審判に経験を積ませたい」という思惑が一致し、学生審判がホイッスルを吹いてくれるようになって、全日本トップ選手の審判は姿を消していた。 審判に初挑戦のアジア大会3位、高塚紀行選手
井上コーチは「昔は私も審判をやって、勉強になりました。審判をやることで、審判の大変さが経験として分かるでしょうし、ルールの勉強という意味で必要があると思いました」と、その理由を話す。また、全日本のトップ選手はいずれ指導に回る場合が多い。「その時には、審判の経験があった方がいいと思います」と、引退後のためにも必要なことと言う。
高塚選手、赤熊選手とも審判は初体験。審判のユニホームは持っていないので、高塚選手は山本英典コーチから、赤熊選手は近藤企画委員長からユニホームを借りてホイッスルを吹き、ジャッジ席に座った。ともに、右手(青)と左手(赤)のどちらを上げていいのか戸惑ったり、立ち位置が悪くてアドバイスされたりと、慣れないことも多かったようだが、何とかこなしてホッとした表情。
高塚選手は「ポイントが入ったあと、すぐポイントが入るとか展開もあって、きつかった。遠目に見ていても感じないのですが、審判の大変さが分かりました」と話す。審判を経験したことで、「ルールもしっかり覚えることができました」とのこと。
赤熊選手は「初めてのことで難しいことが多かったけど、レスリングがさらに分かったような感じがしました。外からでは見えない部分も見えてきました。選手生活に役立つと思います」と話した。
![]() 高塚選手と同じく審判デビューの赤熊猶弥選手 |
![]() オリンピックの金・銅コンビがトレーナーの売り子へ。主役と脇役が入れ替わるのも全自衛隊大会の特徴 |