※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 団体戦の初戦敗退の無念を個人戦優勝で晴らした霞ヶ浦の冨栄雅秀主将
インターハイ23回優勝、全国高校選抜大会は20回優勝。高校レスリング界の雄、霞ヶ浦は、押しも押されもせぬ存在。これまでに、学校対抗戦では「あと1点で負ける」という状況からフォール勝ちして流れを変えるなど、伝統の力で数々のピンチを乗り越え、優勝を手にしてきた。
年明けのこの時期は、3年生が抜けてチームの底上げ時期。さらに、インフルエンザなどが流行しやすい時期で、例年、けがも含めて各チームともに万全ではないことが多いが、それはどの学校も同じ条件。その中でも、霞ヶ浦は大会に照準を合わせてくるチームだった。
今回は74kg級の内山皓太がけがで棄権し、霞ヶ浦は6階級で臨む厳しい布陣だったが、対する埼玉栄も部員不足で120kg級が不在のため6階級での登録。霞ヶ浦には55kg級の岡迫大誠や120kg級の冨栄雅秀と、昨年の全国高校選抜大会優勝時の主力メンバーが残っていることを考えると十分に勝機はあった。 決勝で闘う冨栄雅秀
冨栄は「全部、自分のせいです。悔しすぎて考え込んでしまいました。主将の僕がひっぱっていかなくてはいけなかった。みんなが緊張しているというのに、声かけなどができてなかった」と、主将としてチームをまとめきれなかった自分を責めた。
団体戦で全国に行けないという現実に直面したが、試合は団体戦だけではない。個人戦もある。冨栄は個人戦を前に主将としての役割を果たそうと、真っ先に気持ちを切り替えた。「メソメソするな。もう団体戦は終わったんだから、負けたことは仕方がない。落ち込むひまがあるなら、切り替えて個人戦で全員優勝しよう!」。
その一言で発奮したのか、霞ヶ浦は5階級で決勝に進出。優勝は冨栄一人だけだったが、ベスト8以上に6名が入り、全国大会の切符を手にした。冨栄は「大澤(友博)監督に、『おまえたちが個人でどれくらいやれるのか見ているぞ』と言われた中で、出場したほとんどのメンバーが全国出場を決められたので、うれしい。3月の全国の舞台では、優勝しか見えていない」と、団体の屈辱を払しょくできた様子だった。