※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
銅メダル獲得の中田陽(日体大)。右は吉本収監督、左は木村元彦コーチ
日本チームで唯一のメダルを取った中田は「メダルを取れたことはよかったのですが、出場選手数が少なかった。まあ、及第点というところでしょう」との自己評価。「決勝に出て、アジア大会で結果を出していたインド選手と闘ってみたかった」と、欲の深いところを見せた。
3位決定戦の相手のアンドルー・ホチストラサー(米国)は昨年のパンアメリカン選手権の王者で、価値あるメダル獲得と思えるが、「57kg級での成績でしょうから…。勝たなければならない相手です」と喜びはなし。これは中田の思い違い。パンアメリカン選手権は61kg級で優勝している。中田も出場した昨年11月の「ブラジルカップ」では57kg級に出場していたため、57kg級のパンアメリカン王者と思ったようだ。
この選手、実は初戦で敗れていた相手だ(注=米国式の敗者復活戦方式だったため、初戦で負けた相手と3位決定戦でも対戦)。「最初負けた時、失点は全部自分のミスだった。手の内が分かったし、次にやれば勝てる、という感触はあった」とのこと。再戦では反省点を生かし、見事に勝利へつなげた。「負けたままでは帰れない、と思いました」と、意地の勝利でもあった。
ブラジルカップでは2位になっているので、シニアになって出場した2度の国際大会で2度ともメダルを獲得したことになる。しかし、「国内で勝たなければ意味はない」ときっぱり。「今回は学生王者としての参加ではなかった。今年は学生のタイトルを取る。全日本の大会ではまだ1勝も挙げていないので、勝てるように頑張っていきたい」と言い切った。 米国遠征の学生選抜チーム
■新ルールに対応できなかった(?)グレコローマン選手
男子フリースタイルの吉本収監督(神奈川大監督=全日本学生連盟強化委員長)は「(フリースタイルで)最低2個のメダルはほしかった。褒められる内容ではない。74kg級以上は闘えていなかった。タックルに入っても取れず、97kg級以上は吹っ飛ばされる状況だった」と厳しく第一声。
70kg級までの階級はかろうじて闘えていたというが、「脚を取ってもポイントにつなげられない。自分から行かず、見ているうちに入られてポイントを取られ、追いつけない、という状況。勝つためのどん欲さが足りない」と、評価する中にも厳しい指摘。「欧米のカウンターありきのレスリングに慣れていないのだと思う」とも見ており、外国選手と闘う経験を増やしたいという希望を話した。
そのため、世界学生選手権が実施されない今年(隔年開催のため)は、7月頃に学生選抜の海外遠征を計画。世界学生選手権のない年でも年2回の海外遠征という方針を示した。
男子グレコローマンは、世界レスリング連合(UWW)が検討している新ルールのテスト・ルールが実施され、パッシブを課されても試合が止まらない、コーションを課されてもパーテールポジションの選択がなくそのまま試合が続く、ローリングは1回転しかポイントにならない、などのルール下で行われた。 コーチ陣の最後のアドバイスを聞く選手
馬渕賢司監督(中京学院大監督)は、スタンド中心の闘いになったことで、「スタミナで勝負する日本選手に有利になった面はあった」と振り返る一方、「外国選手もスタミナはつけてくる。以前のように、『外国選手はばてる』という闘い方が通じなくなるのでは」とも見ている。
ローリングは1回転しかできなくなることについては、わき腹を絞められた時の弱さが残る日本選手に有利となる面があるが、裏を返せば4点以上の差をつけられると追いつくのが厳しくなるわけで、どちらに転ぶかは何とも言えないようだ。
試行錯誤の大会の中、日本選手は「事前合宿もテスト・ルールの事前情報もなかったので、やはりルールへの対応ができていなかった。ルールを経験したこれからに期待したい」と話した。
グレコローマンのルールは、このあともいくつかのテスト大会を実施し、リオデジャネイロ・オリンピックへ向けてのルールが確定する予定。