※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
田中幸太郎(阪神酒販)
今月23~24日の「ヤリギン国際大会」(ロシア)に出場し、2015年の本格的な闘いをスタートさせる。全日本2位になったことでロシア遠征かイラン遠征のどちらかに参加できることになり、“ロシア最高レベルの国際大会”と言われる同大会出場を選んだ。「厳しい闘いになると思いますが、優勝を目指し、それ以上に6月(全日本選抜選手権)へつなげられる成果を得てきたい」と燃えている。
■負傷中であっても、世界での闘いを求めた昨秋
2007年の高校三冠王者。2010年の世界ジュニア選手権(ハンガリー)2位を経て、リオデジャネイロ・オリンピックへ向けたレースの最初の大会とも言えた2012年全日本選抜選手権(66kg級)で優勝。早くから期待された選手だ。
田中は全日本選手権決勝で終盤の猛攻も及ばず2-3で敗れた石田戦を「理想は最初からアタックしていくこと。でも、ああいう(追う)展開となったことも仕方なかったと思う」と、強豪相手に精いっぱいの闘いだったと振り返る。石田は早大の1年先輩であり、手の内はお互いに熟知。「カウンター狙いがはっきりと分かった」という状況下では、やみくもに攻撃を仕掛けられないのも当然。 全日本選手権決勝で石田智嗣と闘う田中
実は昨年秋、右の大胸筋腱を切ってしまい、しばらくの間、左構えでの闘いを余儀なくされていた。10月の長崎国体では、この階級の期待の一人で60kg級から上げてきた前田翔吾(クリナップ)に敗れてしまうなど、けがとの闘いもあった。それでも、「目標は全日本選手権だから」と黒星に落ち込まず、目標をしっかり見つめて全日本選手権へ向けて調整してきた。
調整だけではなく、10月にロシア(自費での練習参加と大会出場)、11月にはブラジル(大会出場)へも遠征。けがをしてしまうと、弱気になりがちだが、「日本選手は世界の選手と肌を合わせる機会は少ない。チャンスがある時は参加した方がいい」と攻めの姿勢も忘れなかった。
ロシアへの自費遠征は「大会出場やナショナルチームの合宿ではなく、ふつうのチームに参加して、ふだんの練習や生活に接してみたかった」という明確なテーマを持っての行動。レスリング王国ロシアを支えるひとつのクラブに参加することによって、自分のレスリングを見つめ直した。
■最大の激戦階級! 周りのことより、自分との闘いが大事
2014年は全日本選抜選手権3位、全日本選手権2位、海外ではモンゴル・オープンとブラジル・カップでともに3位。「優勝」には縁がなかった1年だった。しかし、「最終的にはオリンピックに出ることが目標。その過程での成績にはこだわらなくていい。決して悪い1年間ではなかった。つなげられるステップは積めた」と、ここでも目先の勝敗にこだわらず、目標をしっかり見つめている。 全日本合宿で練習する田中
負傷の回復が長引いて実戦復帰はなかったが、ロンドン・オリンピック金メダリスト、米満達弘(自衛隊)の復帰参戦もありえ、男女24階級の中で最大の激戦階級であることは間違いない。
田中は「接戦続きであっても勝ち抜くのだから、石田さんが抜けていると思う。でも、周りを見ると切りがない。内にベクトルを向け、今自分がやるべきことや、今後何をしていくべきかを考えていきたい」と、あくまでも自分との闘いを強調。「他の選手の研究はしますが、だれが来ても自分のレスリングができるかを先に考えていきたい」と話す。
■ロシア遠征で2015年の闘いのスタート
今後の最重要課題には体力の強化を掲げる。石田との決勝戦で最初から思い切って攻められなかったのは、石田のカウンター狙いを警戒しているからだけではなく、「体力的な不安」という理由もあるからだ。「取りに行って、ポイントを失っても取り返す、というレスリングができるためには体力が必要。もっとハードなトレーニングをやらないとならない」と言う。
「その中で新たなことが見えてくると思う」。猛練習の中からこそ技術や戦術面での収穫も出てくると考えており、強化の原点であるハードトレーニングによって、世界選手権代表権の逆転奪取を考えている。
まずロシア・レスリングの再確認。18日からのロシア遠征の成果が期待される。