※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 16年ぶりの試合出場を果たした飯田瑞江さん
飯田さんは女子レスリングの創生期のメンバーの一人。岡山・玉野光南高校時代は柔道の選手で卒業後、自衛隊体育学校に進んでレスリングに取り組み、世界V5の吉村祥子さん(現JOCアエリートカデミー・コーチ)と同じ44kg級で活躍した。16年前の試合を最後にマットから遠ざかっていたが、復帰のきっかけを作ったのは子供の存在だった。
「4歳と5歳の子供がいて横須賀ジュニア教室でレスリングを習うようになり、手伝ってほしいと頼まれ、今ではコーチを務めることになりました。指導者として携わっているうちに、周囲から背中を押されました」と打ち明ける。
練習と違い、試合に出ると勝ち負けがついてしまう現実がある。「不安がありました。メンツもありますし…。けれど、昨年夏に横須賀ジュニアのコーチもしている同期の勝目(力也)君が世界マスターズ選手権で優勝して、わたしも! と思ったんです」と、最終的には同期生の活躍が刺激になって出場を決めたそうだ。 決勝で闘う飯田さん(青)。
来年の参戦を問われると「今回のことでいっぱい、いっぱい。でも、決勝では1点も取れずに完敗でしたので、ものすごく悔しいです。闘いが終わってホッとしているけど、悔しい」と今の気持ちを表した。
飯田さんが現役の時代は、女子がオリンピック競技になる前のこと。全日本女子選手権で2位の成績(1994年)を持ちながら、様々な事情で海外遠征に行くことはできなかった。現在は若手選手でも海外遠征に参加できる環境が整いつつある。飯田さんは、「女子の現状を見て、本当にうれしく思うし、よかったなと思っています」と、女子レスリングの発展についてもうれしそうに笑顔で話した。