※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 世界選手権代表の実力を発揮して日本一に輝いた鴨居正和(山梨学院大)
「自分の性格はネガティブです」と断言する自称“小心者”。「試合前、高田先生(裕司=監督)や小幡(邦彦)コーチに『優勝しろ、しろ』と言われて、正直優勝できるか不安だった」と、周囲が優勝する実力があると評価しても、前向きになれず不安な気持ちでマットに上がった。
ネガティブ思考には理由があった。「9月の世界選手権以降、まったく調子が上がらなくて、自分の体じゃないのではと思うほどだった」と、本来の調子を取り戻せないまま本番を迎えたからだ。確かに、初戦からカウンター攻撃や相手のミスでポイントを得るなど、もどかしい試合が続いた。
初戦の原口遼(鹿児島・樟南高職)戦は4-3と辛勝。2回戦の相手はJOCエリートアカデミー所属の乙黒圭祐(東京・帝京高)。高校生を相手に快勝して初優勝に勢いをつけたいところだったが、先制点を許して追いかける展開に。後半に巻き返して10-5と勝利するが、“泥試合”をしてしまった。 決勝で闘う鴨居
決勝の阿部戦でも、場外際で相手が仕掛けてきたところをカウンターでバックを取って2点。後半にコーションを2度受けて2-2と同点に追いつかれるものの、最初のゴービハインドによる2点が効き、ビッグポイント差で優勝の栄冠を手に入れた。
調子が上がらない中、「本来大学4年生は、11月の全日本大学選手権で引退し、その後の練習は任意参加になる。けれど、自分は今までと変わらず、朝練習、午後練習と取り組んできた」と、できる限りの努力をして臨んだのが勝利への執念につながった。
「日本一の称号を手に入れた。非オリンピック階級なのでレベルは落ちると思うけど、その中ででも一番になれてよかった」と、学生の有終の美を飾れたことに安堵の表情を浮かべた。
卒業後の進路について、以前は「続けないかもしれない」と話していたが、自衛隊に進んで競技を続けることが濃厚となった。「正式に決まってないのですが、進むことになったら、自衛隊の名を汚さないようにしっかりと頑張りたい」と抱負を語った。