※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫) 大けがからカムバックし、圧勝で優勝した山口剛(ブシロード)
大会前から楽勝ムードだったわけではない。層の厚い世界の重量級で勝負するため、山口は積極的に海外武者修行に挑んできた。今年は2月にグルジアに単身遠征。海外の強豪を相手に腕を磨く機会をつくったが、あろうことか練習中に左前十字じん帯を断裂する大けがを負ってしまった。いまだかつて経験したことのないレスリング人生最大のピンチだった。
3月25日に手術をしてリハビリを開始。「スパーリングができるまでに半年、違和感なく動けるようになるまで1年かかる」と診断された。それでも落ち込むことなく厳しいリハビリを重ね、予定通り9月にはスパーリングを開始。何とか今大会に間に合わせた。 病み上がりを感じさせない動きで3連覇を達成
そうは言っても、「ひざにはまだ痛みがある」そうで、万全とは言えず、高い位置でのタックルを心がけて試合に臨んだ。結果は、最大のヤマになると見られた学生二冠王者の山本康稀(日大)との2回戦に完勝すると、あとは“一人旅”といった印象。しっかり復活の勝利を挙げて存在をアピールした。
けがを乗り越えて優勝した重量級のエースは「多くの人に支えられてマットに上がることができた。勝ったことで少し恩返しできたのではないかと思う」と、ひとまずは安堵の表情。今後も世界を見据えて、けがの完治、対外国人対策と休む暇はないが、世界に照準を絞る山口は「6月の全日本選抜選手権で圧勝して、世界選手権ではメダルを獲ってオリンピックの代表権を獲得したい」と迷わず言い切った。