※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 中学6冠を制覇した須崎優衣(JOCエリートアカデミー)
須崎は2020年東京オリンピックのターゲット選手に中学生で唯一名を連ねている有望株。エリートコースのアカデミー所属で注目度は抜群。今大会は須崎の6冠挑戦が一番の目玉だった。
プレッシャーになってもおかしくない状況だったが、須崎は「全国中学生選手権は3連覇の挑戦がプレッシャーに感じてしまったので、今回は楽しもうと思って臨みました。周りの方に『6冠挑戦』と言われても、応援してもらうんだな、と力になりました」とプラス思考でマットに上がり、力を発揮した。
試合数は3試合。1、2回戦は1分以内に勝負を決め、決勝もわずか3分ほどでテクニカルフォール。全試合無失点と力の差を見せつけた。「1、2回戦は攻めのレスリングができたけど、決勝戦はタックルに入れなかった」と決勝戦は少してこずった。 決勝で闘う須崎
初日に勝ち抜いて、同門対決が現実的となった最終日の朝、アカデミーの吉村祥子コーチには須崎と田南部がお互いに意識しているように映ったという。「同じ階級になるのは仕方がないこと。意識するくらいなら、まず決勝にあがってから考えなさい。今から意識してどうするの」と諭したそうだ。
その指導もあってか、須崎は「(田南部を)一人の相手であり、同門などは気にならなかった」と平常心で闘うことができたようだ。田南部は左構えで須崎が得意とするスタイルではなかったが、タックルに入れない場合を考えてスタンドの組み手で崩してバックを奪うなど、タックル以外での攻撃で得点を追加。「これも自分のレスリングの幅だと思っている」と満足そうに話した。
来年からは高校生。カデットの枠を飛び越えてシニアでも活躍が期待される。「まずは48kg級で闘っていけるようにパワーをつけ、全日本の舞台で勝っていけるようになりたいです」。これで中学時代は国内外すべての試合で白星。吉田沙保里(ALSOK)伝説ならぬ“須崎伝説”の序章は、まだ始まったばかりだ。