※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 3年ぶりに全国王者に返り咲いた基山仁太郎(三重・四日市ジュニア)
「中学初タイトルを取れてうれしいです」とホッとした表情を浮かべた基山。この優勝は「復活優勝」といっても過言ではない。小学生時代は全国少年少女大会で7連覇するなど敵なしの強さを誇り、中学入学と同時にJOCアカデミーに入校。エリートコースまっしぐらだった。
だが、本人はスランプに陥っていた。昨年6月の全国中学生選手権では男子53kg級に出場してベスト8。昨年のこの大会では、まさかの2回戦敗退。思うように成績を伸ばせない自分を見て、「両親のそばにいた方が精神面などでいいかなと思った」と、地元・三重に戻って一から出直すことを決めた。
地元に帰ったからと言って、レスリングの情熱が冷めたわけではなかった。出身クラブの三重・四日市ジュニア教室で再起をはかり、週末には高校界で全国区の強さを誇る同県のいなべ総合高に顔を出し、高校生に稽古をつけてもらった。
臨んだ最後の全国中学生選手権は、男子59kg級で復活の序章となる準優勝。今年9月からは毎週、平日に3~4回ほど授業のあと片道40分かけていなべ総合高に通い、今大会に向けて仕上げてきた。同高の藤波俊一監督は、「JOCアカデミーにいた選手ですから、レスリングに関しては攻撃能力も素晴らしいしバランスもいい。技なども素晴らしいものを持っていました。ただ、自信がなかったので、メンタル面のケアを中心に指導しました」と振り返る。 決勝で闘う基山
紆余曲折があった中学3年間。最後の大会で復活を遂げた基山に、さらなるプレゼントがあった。男子優勝者の中の最優秀選手賞に選出され、東京都知事賞を受賞した。「東京都知事賞は基山仁太郎選手!」とアナウンスされると、四日市応援団からも歓喜の声があがった。
「この4月から両親に支えてもらって強くなった。クラブへの送り迎えも、電車だと片道2時間ほどかかるため、両親が40分かけて送り迎えしてくれましたし、減量中の食事面もサポートしてくれたので感謝したい。都知事賞を取って少し恩返しできたと思う」。
長いスランプを抜けて基山が中学最後の大会で見事に復活! 「この優勝をきっかけに、もっと高いところに行きたい」と自信も完全に取り戻していた。