※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫) 昨年の66kg級に続いて2連覇した保坂健(早大)
全日本大学選手権の同級は、昨年の66kg級の覇者で今年の世界選手権70kg級代表の保坂健(早大)が優勝。3回戦で期待の新人の1人の浅井翼(拓大)を退け、最後は西日本から唯一決勝進出を果たした平野翼(同志社大)にテクニカルフォールで圧勝。74kg級として初めての試合(リーグ戦を除く)を飾った。
「ホッとしました」と保坂。この階級の出場は初めてということ以上に、「1年生が強い階級。負けられない、という気持が強かった」という理由からだ。学生王者の奥井眞生(国士舘大)とは闘わなかったが、同2位の浅井には3-3の内容差での勝利。終盤やっと同点に追いつくという展開で危なかったものの、「意地でしたね」と勝因を話した。
この試合が始まる少し前、65kg級のマットでチームメートの桑原諒が60kg級学生王者の中野晶太(日体大)にラスト数秒で逆転勝ちした試合があった。「あの粘りに刺激された。泥くさくても勝つことにこだわった」という気持ちが、「終了間際の逆転につながった」と振り返った。
■やはりきつい74kg級での闘い、パワーアップが今後の課題
辛勝の反動もあった。続く準決勝の木村政貴(専大)との試合までに体力が回復せず、「マットに上がれないかな、と思った。やばかった」と言う。だが、ばてていても、ばてたなりに闘って勝利につなげるのが一流選手。コーションを取られないようにしつつスタミナの消耗を防ぎ、要所で力を爆発させる闘いで4-0の勝利。このあたりは、世界選手権出場を果たす実力者のうまさなのだろう。 決勝はアンクルホールドの連続で快勝
昨年まで66kg級の選手。オリンピック階級が65kg級になり、66kgでも減量が厳しかったので選手活動の続行も懸念されたが、70kg級(非オリンピック階級)という階級ができて、“渡りに舟”の幸運に恵まれた。アジア選手権で3位に入賞し、世界選手権出場も果たして順調に力を伸ばした。オリンピックを目指すには、階級を上げなければならない。その試運転としての74kg級出場だった。
「やっぱりきついですね」というのが74kg級の感想。通常体重は73kgくらいとのことで、ふだん80kgくらいある選手が相手では、もっと体を大きくする必要を感じたという。12月の全日本選手権で一気に74kg級にするか、70kg級で優勝してから上げるかは思案中だが、いずれ上げなければならない。
70kg級に出るにしても、並行してパワーアップすることは必須。他に、「あがり症なので、試合になると力を発揮できないところを治したい。開始からどんどん攻めていくレスリングを目指したい」と、精神力強化と攻撃精神も課題。それでも、今回の優勝で「(74kg級としての)いいスタートは切れました」と気持ちは上向いている。学生の大会の最後を飾ったこの優勝は、幸先いい再スタートでもあった。