※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫) 3年連続優勝とMVPを獲得した山本康稀(日大)
大会前に富山英明監督から出された指令は「全試合、フォールかテクニカルフォールで勝て」。終わってみると、その命令を忠実に実行し、テクニカルフォール勝ち4試合、フォール勝ち1試合の圧勝優勝。ポイントの合計は51-2で、1試合平均の試合タイムは2分23秒だった。
しかし山本は「決勝で、やらなくていいポイントをやってしまって悔いが残る」と第一声。全日本大学グレコローマン王者の志喜屋正明(国士舘大)との決勝は、ばてている時に突っ込んでしまったそうで、「ばててしまった時にどうやって試合を運ぶかが今後の課題です」と言う。
また、第1ピリオドの途中に4点技を決めて6-0とし、一気に10点差をつけるかの勢いだったが、相手陣営からチャレンジ(ビデオチェック要求)。判定は変わらなかったため1点をもらい、差が広まったにもかかわらず、たたみかけることができなかった。
ビデオチェックで流れが途切れたこともあるが、「あと3点、と思った。その気持ちがよくなかった」とも言う。点差が離れても気をゆるめてはならない課題も見つかり、圧勝優勝の中にも学ぶべきことは多かったようだ。 決勝で闘う山本
この経験を生かし、12月には全日本選手権に挑む。「監督からの全試合フォールかテクニカルフォールという命令は、上を目指すためです。それをクリアできたので、全日本選手権では優勝争いにからみ、自分がリオデジャネイロ・オリンピックに出る気持ちで頑張る」と言う。
6月の明治杯全日本選抜選手権では、下の階級から上げてきたばかりの鈴木聖二(岐阜・岐阜工高職)に敗れた。「そこまでの実力だったということです。びびってしまった面もありました」と力不足を認めつつ、「それからしっかり鍛えています」と巻き返しにかける。
昨年の世界選手権で8位入賞を果たした山口剛(ブシロード)も、けがを克服して戻って来る。「今回みたいにうまくいかないことは分かっています。でも、勝たないとオリンピックを口にすることはできません」ときっぱり。日大の重量級には山本の実力に匹敵する練習相手がいない現実があるが、「その中でも、いろんな状況をつくって練習し、工夫して乗り切りたい」と話した。