2014.11.14

【全日本大学選手権・特集】無欲の勝利(!?) 1年生王者が起爆剤となって日大が9年ぶりの栄冠

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)

 1年生王者が誕生し、3年生にして3連覇を達成する選手が生まれた日大が、男子フリースタイルの大学日本一を決める全日本大学選手権を9年ぶりに制した。この間、東日本学生リーグ戦や全日本学生王座決定戦(現在は行われていない)の優勝もないので、9年ぶりの団体優勝となる。

■日大の年度別の団体戦成績

リーグ戦 学生王座 大学グレコ 大学
2005年 4位 優勝 12位 優勝
2006年 2位 3位   2位
2007年 2位 二回戦敗退 12位 6位
2008年 B3位 二回戦敗退 19位 6位
2009年 B3位 二回戦敗退 7位 4位
2010年 B2位 3位 13位 3位
2011年 A2位 -- 13位 6位
2012年 B2位 -- 17位 2位
2013年 A2位 -- 18位 5位
2014年 4位 -- 21位 優勝

(注)リーグ戦は東日本学生リーグ戦、学生王座は全日本学生王座決定戦、大学グレコは全日本大学グレコローマン選手権、大学は全日本大学選手権

 選手からの胴上げを受けて宙を舞った富山英明監督は「やっぱり、いい気持ちだね。うれしい。前回の優勝? 胴上げを受けたかな? 覚えていないほど遠い昔だよ」と舌も滑らか。65kg級と97kg級で優勝候補を抱えてはいたものの、5月のリーグ戦は4位に終わるなど、全階級を通じた戦力は「一番手」とは言い難い状況。各選手が持ち味を100パーセント出しての優勝に、同監督は「無欲の勝利とは、こういう勝利を言うんだろうね。正直言って、まだ優勝が信じられないんだよ」とうれしそう。

 白井勝太が86kg級で優勝し、57kg級の前田頼夢も3位入賞と1年生の頑張りがあったが、「刺激されて上級生も頑張ってくれた」と、全学年が結束しての勝利であることを強調した。組み合わせに恵まれた部分は否定しなかったが、「くじ運だけじゃ優勝できない」と強調した。

 今年は区切りの年でもあった。9月に、レスリング場兼合宿所を練馬区羽沢から世田谷区上北沢に移し、新しい本拠地で新たな歴史をスタートさせた年だったからだ。「地元の人は『日大レスリング部ってどんなクラブだろうか』と注目していたと思う。最初に結果を出せてよかった。これで、地元の人たちもいっそう応援してくれると思う」と話し、この優勝によって地元とのつながりが強くなることを期待した。

 1996~98年には3年連続優勝を達成するなど相性のよかったこの大会も、ここ8年間、優勝から遠ざかってしまった。「あきらめないでやれば、必ず優勝できる時が来るということだね。選手も、あきらめずに努力を続けることの大切さを感じてくれたと思う。学生スポーツは、努力を人生の財産にする場所」と、選手の努力をねぎらった。

■池田智主将は団体戦優勝で有終の美を飾る

 チームをけん引してきた池田智主将は、65kg級での優勝は逃したものの、「団体で優勝できてよかった。団体戦で勝つためにみんなで頑張ってきた。リーグ戦で駄目で、そのあと、かなり厳しい練習をやってきたが、みんながついてきてくれた」とうれしそう。3年前のこの大会を初め、国体や全日本学生選手権など個人の優勝は何度も経験してきたが、「団体優勝のうれしさは段違いです。9年ぶりにチームに優勝をもたらしたことが、うれしさに拍車をかけてくれています」と話した。

 初日に1年生王者が誕生したことで、上級生が頑張れたという。「優勝できなかった選手も、上位入賞という形で援護射撃をしてくれた。歯車がぴったりあった」と、メダルを手にできなかった選手の頑張りも評価した。

 自身は卒業を機に第一線を退く予定で、この大会を引退試合と決めていた。決勝で高谷大地(拓大)に敗れたのは悔いが残るが、「高谷は伸びているいい選手ですから」と話し、彼になら負けても仕方ないといったところ。「団体優勝の喜びが悔しさをカバーしてくれました。最高の最後を飾れました」と、優勝の喜びにいつまでも浸っていた。