※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)
1年生王者が誕生し、3年生にして3連覇を達成する選手が生まれた日大が、男子フリースタイルの大学日本一を決める全日本大学選手権を9年ぶりに制した。この間、東日本学生リーグ戦や全日本学生王座決定戦(現在は行われていない)の優勝もないので、9年ぶりの団体優勝となる。
■日大の年度別の団体戦成績
年 | リーグ戦 | 学生王座 | 大学グレコ | 大学 |
2005年 | 4位 | 優勝 | 12位 | 優勝 |
2006年 | 2位 | 3位 | 2位 | |
2007年 | 2位 | 二回戦敗退 | 12位 | 6位 |
2008年 | B3位 | 二回戦敗退 | 19位 | 6位 |
2009年 | B3位 | 二回戦敗退 | 7位 | 4位 |
2010年 | B2位 | 3位 | 13位 | 3位 |
2011年 | A2位 | -- | 13位 | 6位 |
2012年 | B2位 | -- | 17位 | 2位 |
2013年 | A2位 | -- | 18位 | 5位 |
2014年 | 4位 | -- | 21位 | 優勝 |
(注)リーグ戦は東日本学生リーグ戦、学生王座は全日本学生王座決定戦、大学グレコは全日本大学グレコローマン選手権、大学は全日本大学選手権
選手からの胴上げを受けて宙を舞った富山英明監督は「やっぱり、いい気持ちだね。うれしい。前回の優勝? 胴上げを受けたかな? 覚えていないほど遠い昔だよ」と舌も滑らか。65kg級と97kg級で優勝候補を抱えてはいたものの、5月のリーグ戦は4位に終わるなど、全階級を通じた戦力は「一番手」とは言い難い状況。各選手が持ち味を100パーセント出しての優勝に、同監督は「無欲の勝利とは、こういう勝利を言うんだろうね。正直言って、まだ優勝が信じられないんだよ」とうれしそう。 9年ぶりの団体戦優勝を成し遂げた日大
今年は区切りの年でもあった。9月に、レスリング場兼合宿所を練馬区羽沢から世田谷区上北沢に移し、新しい本拠地で新たな歴史をスタートさせた年だったからだ。「地元の人は『日大レスリング部ってどんなクラブだろうか』と注目していたと思う。最初に結果を出せてよかった。これで、地元の人たちもいっそう応援してくれると思う」と話し、この優勝によって地元とのつながりが強くなることを期待した。
1996~98年には3年連続優勝を達成するなど相性のよかったこの大会も、ここ8年間、優勝から遠ざかってしまった。「あきらめないでやれば、必ず優勝できる時が来るということだね。選手も、あきらめずに努力を続けることの大切さを感じてくれたと思う。学生スポーツは、努力を人生の財産にする場所」と、選手の努力をねぎらった。 胴上げされる池田智主将
チームをけん引してきた池田智主将は、65kg級での優勝は逃したものの、「団体で優勝できてよかった。団体戦で勝つためにみんなで頑張ってきた。リーグ戦で駄目で、そのあと、かなり厳しい練習をやってきたが、みんながついてきてくれた」とうれしそう。3年前のこの大会を初め、国体や全日本学生選手権など個人の優勝は何度も経験してきたが、「団体優勝のうれしさは段違いです。9年ぶりにチームに優勝をもたらしたことが、うれしさに拍車をかけてくれています」と話した。
初日に1年生王者が誕生したことで、上級生が頑張れたという。「優勝できなかった選手も、上位入賞という形で援護射撃をしてくれた。歯車がぴったりあった」と、メダルを手にできなかった選手の頑張りも評価した。
自身は卒業を機に第一線を退く予定で、この大会を引退試合と決めていた。決勝で高谷大地(拓大)に敗れたのは悔いが残るが、「高谷は伸びているいい選手ですから」と話し、彼になら負けても仕方ないといったところ。「団体優勝の喜びが悔しさをカバーしてくれました。最高の最後を飾れました」と、優勝の喜びにいつまでも浸っていた。