※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 3連覇を達成し、山梨学院大主将の役目をしっかり果たした鴨居
「勝った時に何をするかは考えていました」と、勝った瞬間は3連覇を大きくアピールしたパフォーマンス。「内容が全然よくなかった。3連覇がかかり、動きが終始悪かった」の反省する一方、「今回の目標は勝つことだったから、勝ててよかった」とホッとした表情を浮かべた。
内容より結果にこだわったことには訳があった。「3年連続で組み合わせが悪い…。いつも対戦したくない相手の隣の番号をひいてしまう」とのことで、今年も組み合わせは最悪。1回戦は全日本選抜選手権3位の実績を持つ阿部宏隆(国士舘大)、準々決勝では57kg級から階級を上げてこの階級に挑んだ日体大のスーパールーキーの樋口黎と対戦する組み合わせだったからだ。
昨年も高谷大地(拓大)、池田智(日大)などシニアレベルで実績がある選手と同じブロック。「今年も、このような組み合わせになってしまい、もう嫌になった」と、組み合わせ後は落ち込んだ。
それでも、「今年は自分の代だし、春のリーグ戦に続いて大学の2冠もかかっていた。監督やコーチから『4年生が頑張らなくてはならない』とずっと言われていた」と気持ちを立て直してマットに上がった。
■樋口黎(日体大)戦はラスト20秒から再逆転勝利
阿部戦、樋口戦ともに4-3と薄氷を踏む勝利だった。樋口に対しては、「57kg級の選手だし、対戦したくなかった」と話したが、対策はしっかり積んでいた。「対戦したことがある選手から情報を得たり、コーチ陣の分析を聞いたりして、樋口君の苦手なことをやったことがよかった」と、後半まで2-1と試合を優位に進めた。 絶体絶命となった樋口戦。終了間際にがぶり返しで勝負をかけた(赤が鴨居)
こうして日体大の期待のルーキーを倒し、大会3連覇を成し遂げてチームの今季2冠狙いに貢献。理想の結果を手に入れた。その原動力は、今年9月の世界選手権(ウズベキスタン)の代表に抜ってきされたことが大きかった。「世界選手権に出たことで、インカレ(全日本学生選手権)は欠場しました。最後の学年で学生二冠王者になれなかった。それなのに世界選手権ではふがいない試合をしてしまって、その分、頑張りたかった」。
「2年連続学生2冠王者」の肩書はならなかったが、今年の鴨居の肩書は、「世界選手権に出場した大学王者」。だれが見ても昨年以上の結果だ。
苦しい闘いを制し「ちょっと自信になった。明日、チームが優勝すれば本当にうれしい」と、最後は山梨学院大の主将としての顔に。「性格はネガティブ(消極的)」と話す鴨居が、弱気に打ち勝ってつかんだ3連覇。
鴨居らの活躍で、山梨学院大は初日の大学対抗得点で36.5点をマークし、単独トップに。2大会ぶりの優勝へ向けて勢いをつけた。