※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
東日本学生リーグ戦で優勝し、胴上げされる山梨学院大・下田正二郎部長
各階級の大学王者を争うとともに、8位以内入賞者の得点合計で大学日本一のチームを競う内閣総理大臣杯全日本大学選手権は11月12日(水)~13日(木)、東京・駒沢体育館で36大学がエントリーして行われる。昨年の大学対抗得点は、第1日に首位の日体大に11点差をつけられて3位だった早大が、最終日に重量級の強さで逆転。山梨学院大の連覇を阻止し、39回目の大会にして初優勝を飾った。
今年は東日本学生リーグ戦を圧勝で2連覇した山梨学院大が覇権を奪還するか。19度の優勝を誇る日体大は、今シーズンの団体戦無冠は避けたいところ。拓大は全日本大学グレコローマン選手権を圧勝で優勝した勢いを持ち込めるか。全日本学生選手権(フリースタイル)で2階級を制した日大、国士舘大もあなどれない。
優勝階級数を競うのではなく、まんべんなく勝ち上がることが必要なシステム。0点(9位以下)があると大きく後退してしまう。組み合わせ(抽選は試合日の前日)にも左右され、これまで、下馬評は高くなかった意外な大学が優勝するケースもあった。
大学対抗得点の見どころをさぐった。
《大会日程》
12日(水) 61・70・86・125kg級
13日(木) 57・65・74・97kg級
(大会は、全試合、インターネット生中継されます)
《大学対抗得点システム》 各階級の1位から8位に下記の得点を与え、その合計によって順位を決める。 優勝=12点、2位=9点、3位=6点、5位=3.5点、7位=2点、8位=1点 |
■3階級で勝って2年ぶりの優勝を目指す…山梨学院大
今年1月に階級区分が変わってからこの大会が行われるのは初めて。9月に、ひと足先に8階級で行われた全日本大学グレコローマン選手権は、優勝の拓大が66点をマークした。この大会では、以前8階級で行われた時代の優勝得点は、1997年=75点(日大)、98年=64点(日大)、99年=58点(山梨学院大)、2000年=53点(国士舘大)、01年=63点(日体大)。
1997年の日大は8階級すべてで3位以内というずば抜けた成績で75点をマークした。現在の大学のフリースタイルは、群雄割拠の状況。優勝ラインは「50~55点」くらいになるのではないか。
そんな中で、3階級制覇の可能性を一番高く持つのが山梨学院大。57kg級の高橋侑希(世界選手権5位)、61kg級の鴨居正和(世界選手権代表)、125kg級のオレッグ・ボルチン(全日本学生選手権優勝)の3階級を制する可能性は十分にありうる。この3階級で36点(12点×3)。
ここに、70kg級の木下貴輪、74kg級の木村匠、86kg級の亀山晃寛、97kg級の吉川裕介の4階級が最低でも3位決定戦にからめば、優勝ラインの「50~55点」に手が届き、60点を超える場合も出てくる。
大激戦が予想される山崎達哉(青)と高橋侑希の一戦=写真は東日本学生リーグ戦
■軽量2階級を制覇できるか…日体大
一方、6年ぶりの優勝を目指す日体大のパワーが爆発すれば、山梨学院大の3階級制覇は阻止できそう。57kg級の山崎達哉は、5月の東日本学生リーグ戦と10月の長崎国体で高橋と対戦。ともに負けているが、実力差が縮まっているのは明白な試合内容。その成長曲線のままいけば、今度の闘いでは高橋を上回っていてもおかしくない。
61kg級は、全日本学生王者の中野晶太ではなく(中野は65kg級にエントリー)、57kg級で成長著しい樋口黎と全日本学生選手権2位の中田陽をエントリーする布陣をしいた。どちらを起用するにせよ、学生王者の抜けた穴を埋める実力は十分。
日体大がこの2階級で勝つこと、すなわち山梨学院大の優勝を125kg級の1階級のみに下げることができれば、が然、日体大が有利になってくる。65kg級・中野晶太、70kg級・中村百次郎、74kg級・屋比久翔平、86kg級・松坂誠應、97kg級・笹川久志、125kg級・奈良勇太と、優勝を逃しても3位には入れる選手がそろう。
軽量2階級で24点(12点×2)を取り、残る6階級で36点(6点×6など)とまでは言わないが、30点近くを取れば優勝ラインの「50~55点」へ。軽量2階級で優勝を逃した場合は、65~86kg級で優勝、もしくは準優勝という形で埋め合わせたいところだ。
■大学グレコ選手権の勢いを持ちこせるか…拓大
拓大は、65kg級で世界選手権7位の高谷大地(2年)、74kg級で全日本学生選手権2位の浅井翼(1年)、125kg級でグレコローマンの世界選手権代表の園田新(2年)の1、2年生の出来がかぎをにぎりそう。65kg級には全日本学生選手権優勝の池田智(日大)、74kg級には70kg級世界選手権代表の保坂健(早大)、125kg級にはオレッグ・ボルチン(山梨学院大)という強敵が立ちはだかる。3階級制覇は難しくとも、3階級とも2位か3位は確保したいところ。
上級生も負けてはいられまい。57kg級で昨年55kg級2位の西山凌代、70kg級で全日本学生選手権3位の湯田敬太、または高橋翔平、97kg級でフリースタイルの選手ながら全日本大学グレコローマン選手権を制した岡嶋勇也らが上位に食い込むことで、優勝戦線に加わりたい。
■奥井眞生、嶋田大育の活躍で復活優勝あるか…国士舘大
国士舘大復活のかぎを握る1年生学生王者・奥井眞生
東日本学生リーグ戦で16年ぶりに2位に入った国士舘大は、全日本学生選手権で74kg級の奥井眞生と86kg級の嶋田大育が勝ち、古豪復活を色濃くしている。今大会も奥井と嶋田には勝ってもらわねばなるまい。
57kg級でJOC杯55kg級優勝の大城一晟、61kg級で全日本選抜選手権3位の阿部宏隆、65kg級で全日本学生選手権3位の金城希龍、97kg級で昨年の全日本学生選手権2位の志喜屋正明、125kg級に起用されるJOC杯グレコローマン96kg級優勝の宮國雄太と上位入賞を狙える選手がそろう。各選手が最大限の力を発揮すれば、優勝ラインの「50~55点」は不可能な得点ではない。
日大も全日本学生選手権で65kg級の池田智と97kg級の山本康稀が優勝しており、今回もこの2階級は確実に取りたいところ。70kg級に起用される同65kg級2位の新川武弥、同86kg級3位の白井勝太が優勝争いに加わり、他の階級でも5位以内に食い込むことを目指せば、優勝ラインの「50~55点」には届く。
早大は74kg級に起用される世界選手権70kg級代表の保坂健と全日本学生選手権70kg級優勝の多胡島伸佳の2階級で優勝を目指す。125kg級の前川勝利も優勝争いに加わらねばなるまい。
専大も全日本学生選手権57kg級優勝の中村倫也と両スタイルで活躍する同グレコローマン85kg級優勝の与那覇竜太の2選手に優勝の可能性がある。
ともに、大学対抗得点の優勝争いにからむには、他階級の奮起が必要ということは言うまでもない。