※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫) 78歳で参加した青木巧さん
「C型肝炎が完治し、体力が戻ってきたつもりでしたが、やっぱり体が動きませんね。(来年1月の)全日本マスターズ選手権はちょっと無理かな…」と弱気の言葉を口にする一方、「1年間、しっかりやれば何とかできるかな、という気持ちもあります」と、希望も口にする。
まったくの初心者ではなく、1964年の東京オリンピックを3年後くらいに控えたころ、全日本チームの常設練習場・青山レスリング会館で活動していた社会人チーム「東京レスリング倶楽部」で2年ほどレスリングをやったことがあった。
「相撲が好きでしたが、体が小さかったので、階級制のレスリングなら、と思ってやってみました」と言う。時に日本代表選手からも練習の相手をしてもらい、全日本社会人選手権に出場したこともあるという。 田南部力コーチ(右)の見守る中、練習する青木さん
当時と違ってマスターズレスリングがあることを知り、いろんなところに問い合わせたが、近くにマスターズ選手が練習できるクラブはなかった。埼玉県では唯一、入間市にあるはんのう山中道場が受け入れていることが分かった。加須市からだと車で片道2時間かかる。大変だが、「他にできることころがないので、通い続けてみようと思います」と決心した。
今回の講習会では、今村さんと打ち込みをやることが多かった。同じ70代だが、「私と違って、ずっとやっている人ですからね…」と話し、ちょっときつそうな表情。それでも、「1年かければ何とかなるでしょう」という言葉を繰り返し、前を見据えた。
全日本マスターズ選手権の最高齢出場は、2013年の米盛勝義さんの「88歳」。青木さんの元気さなら、その更新も不可能ではいだろう。