※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 砂川航祐選手(千葉・柏日体高)と日体大の松浪健四郎理事長
スーダンはエジプトの南にある国で、9月末に派遣が正式に確定した。派遣事業は、日体大の松浪健四郎理事長(日本協会副会長)に話があり、砂川選手に白羽の矢が立った。一般的にポピュラーな青年海外協力隊とは別事業で、多くの文化交流を図っている。
砂川選手は大阪・吹田市民教室~茨城・霞ヶ浦高を経て日体大に進学し、いずれも主将を務めたエリート街道を進んだ選手。学生チャンピオンにない、今年は世界学生選手権へも出場した。ことし4月からは、日体大の姉妹校である、千葉県の柏日体高校で体育の非常勤講師として働き始め、来年には指導の道へも進む。
松浪氏は「青年海外協力隊は長期派遣で、かつ初心者に指導する事業であるのに対し、国際交流基金のプログラムは、基本的に短期間の派遣。高度な技術を教えることができる人材を派遣しています。砂川選手は一流選手ですから、今回の事業にぴったりの人材だと思っています」と期待をかけた。
スーダンでのレスリング(AFPニュース) |
砂川選手は「スーダンは、ヌバレスリングというビーチレスリングを簡単にした競技が伝統競技として普及しています。大会には何百人単位で観客も集まる人気競技なのですが、一般的なレスリングのルールは、ほとんど浸透していないようです。スーダン共和国としては、今後、レスリング競技のオリンピック出場を見据えているようで、今は本格的なレスリング競技の指導者を求めているようです」と、スーダンからの派遣依頼の理由を話した。
具体的な役目は、週4日、17時~20時までの3時間、18歳から20歳の若手ヌバレスリング選手の選抜メンバーにレスリングを教えること。スーダンはアラビア語が使われているため、大使館で砂川選手のために通訳も手配してくれるというVIP待遇だ。
現在は、A型・B型肝炎と破傷風、黄熱病の予防接種やレスリングの指導計画書作成など目まぐるしい毎日を送っている。「通訳の方も24時間いるわけではないので、自分でもある程度分かるようにしなければ」と、アラビア語の習得にも意欲を見せた。
指導計画書は、松浪理事長からの「あまり厳しくすると練習に来なくなってしまう」というアドバイスを生かし、「2人組で楽しく練習する」を基本とした練習メニューにする予定だという。
■スーダンでの教え子が2020年東京オリンピックに来ることを期待 スーダンの位置
それもそのはず。砂川選手は「今」しかこの事業に参加できない理由がある。「柏日体高では現在、レスリング部を作る準備をしています。来年度からは生徒も募集して、本格的な指導を始めます。そのため、このような事業には今しか参加できません。いろいろな経験をして、来年からの指導の糧にしたいです」。
レスリングといっても、タックルや投げなどいろいろなスタイルがある。「どんなレスリングを教えたいか?」という質問に、間髪いれずに「レスリングは“タックル”だと思っています。アフリカ人は身体能力が高いので、タックルをひとつ覚えたら、ものすごく強くなると思う。タックルに入るタイミングのコツを習得してもらいたいです」と答えた。
2020年東京オリンピック開催が決まり、松波理事長は「レスリングや体操など日本のお家芸の競技の指導者派遣要請などの国際交流は活発になる」と予想している。
砂川選手は「僕が教えた選手が、東京オリンピックに出場してきたら、どれだけうれしいんだろうな、と考えると、すごくやりがいがあります。悔いのないように、そして、松浪理事長に、『砂川を派遣してよかったな』と思っていただけるように頑張ってきます」と目を輝かせていた。