※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 専門外のスタイルながら、3位で地元国体を飾った松坂誠應(長崎・日体大)
会場に入ると、ひときわ目立った横断幕が目に入った。「南島原市西有家町出身 必勝 松坂誠應」と大きな文字で書かれた横断幕。その上に親戚一同がずらりと並んだ。自宅は会場の島原市復興アリーナから車で20分ほど。叔父叔母、いとこまで松坂一家が勢ぞろいの中、松坂はマットで躍動した。
「横断幕を作ってくれていることは知らなくて、びっくり」とうれしかった反面、初日の準々決勝の相手、守部克秀(宮崎・青学大)は昨年の新人戦(グレコローマン)の3回戦で負けました。「(今回は)左ひざをけがしていて、大会前の1週間しか練習が積めず、横断幕がある中、2日目に進めなかったらどうしようと思いました」とプレッシャーを感じていた。
その緊張感を力に変えた。守部には開始からどんどん攻め、わずか1分34秒でテクニカルフォール勝ち。最終日の準決勝に駒を進め、親戚一同の前で2日間に渡って活躍を披露した。
■すぐにフリースタイルでの勝負が待っている
準決勝で全日本学生選手権3位の星翔也(福島・日体大)に敗れて決勝に行けず、「天野(雅之)さんと対戦する姿を見せたかった」と悔しそうに話したが、松坂にとってグレコローマンは専門外。高校時代は全国高校生グレコローマン選手権2位などの実績があり、昨年の全日本選手権は出場資格の関係でグレコローマンで出場しているが、現在の “主戦場”はフリースタイル。 親戚一同が集まっての応援が松坂を支えた
長崎県には、フリースタイルの有望株がたくさんいる。両スタイルで実績がある松坂は、県の事情でグレコローマンにエントリーされてしまった。「投げ技は得意ではないけど、本当に強い人は両スタイルで強いですから、やるしかないと思った。実際に、差しなど勉強になることがいっぱいありました」と、この経験を今後のフリースタイルに生かす腹積もりだ。
フリースタイルに出場していたら、初日が台風の影響で中止で、全階級がベスト8までしか行わないアクシデントがあった。「グレコローマンに出たことで準決勝までやれて、やりがいはありました。自分の力も出せましたし、表彰台に上れて長崎県にも貢献できた。地元国体はめったに出られませんので、いい思い出です」と充実感を漂わせた。
地元国体が終わっても松坂に休みはない。11月には全日本大学選手権に出場し、12月には全日本選手権が控える。直近の全日本大学選手権は専門のフリースタイル。「この国体の経験を生かして、絶対に優勝したい」とタイトル奪取に燃えていた。