2014.10.16

【長崎国体第2日・特集】2年2ヶ月ぶりの全国タイトル! 乙黒圭祐(東京・帝京)が悲願の国体初制覇

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

 春夏王者倒しての悲願の初優勝! 「長崎がんばらんば国体」の少年フリースタイル60kg級は、JOCエリートアカデミー所属の乙黒圭祐(東京・帝京)が、決勝でインターハイ2位の嶋江翔也(佐賀・鳥栖工)を12-5で破って国体初優勝。全国タイトルは1年生の時の新潟インターハイで50kg級を制覇して以来で、実に2年2ヶ月ぶりの頂点だった。

 乙黒は「1年のインターハイ以来、ずっと勝てなかった。8月のインターハイは(弟の)拓斗と兄弟優勝しようって約束したのにできなくて、足りないものの対策をこの2ヶ月間してきました」と、夏の失敗をバネにしての栄冠だった。

 全国高校選抜大会やインターハイと違い、国体はフリースタイルとグレコローマンの2スタイルが行われ、強豪選手が散らばり、優勝するチャンスは広がる。だが、今回の少年フリースタイル60kg級の組み合わせを見て、乙黒自身が「まじかよ、と思いました」と目を疑うほどの激戦トーナメントだった。

 初戦(2回戦)は全国高校選抜大会50kg級王者の成国大志(三重・いなべ総合学園)、3回戦(準々決勝)は同じ関東でしのぎを削ってきた全国高校選抜大会60kg級2位の佐々木拓海(群馬・館林)、準決勝はインターハイ王者の米澤圭(秋田・秋田商)という死のブロック。

 全国高校選抜大会では嶋江に、インターハイでは米澤に負けて表彰台を逃した乙黒は、最初こそ動揺したが、「このトーナメント勝ったら、すごいな」と、逆にモチベーションに変えてトレーニングに精を出した。

 「インターハイでの反省は2つありました。力不足とタックルに入ってからの処理です。練習時間を3部練に変えて、昼休みは筋トレを行ってパワーをつけ、(シニアの)全日本合宿にも参加させてもらって、タックルの処理を修正してきました」。弱点を克服した乙黒は、初戦の成國戦を11-0とあっさりテクニカルフォールで下した。

 苦しい戦いは次の試合からだった。3回戦の佐々木戦は17-7、準決勝の米澤戦は14-10、決勝の嶋江戦は12-5。4試合での合計得点は54点だったが、失点も22点。死闘を繰り広げた。「いつも競って負けていました。だから、競って勝てるようにと思いました。(アカデミーの)江藤コーチにも『点を取られるのは大丈夫。それ以上に取り返せばいいから』と言われて、粘り強く、がむしゃらにできた」と、思った通りの試合展開だった。

 1年生でインターハイ王者になった乙黒が、その後伸び悩んだのは163cmから175cmまで成長し、体作りに苦労したことが一番の原因だった。「母が長身なので、ある程度、大きくなることは予想していたけど、思った以上に伸びて、筋肉と体力が追いつかなかった。勝てなくて悩みました」と打ち明けた。

 JOCアカデミーは今年度で卒業し、来年からは大学生になる。「最後に恩返しができた。これからも頑張っていきたい。当面は61kg級で頑張って、いずれは65kg級で活躍できるようにしたい」と今後の抱負を力強く語った。