※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=保高幸子) 銀メダル獲得の湯元進一(自衛隊=左)と前田翔吾(クリナップ)
27ヶ国から183人が出場し、57kg級は45選手の出場があったという大規模な大会。日本からは選抜チーム6選手が出場し、2012年ロンドン・オリンピック55kg級銅メダルの湯元進一(自衛隊)は57kg級で、手術から復帰し65kg級に上げた昨年の世界選手権60kg級代表の前田翔吾(クリナップ)の2選手が2位に入賞した。
ヤクーツクでは、フリースタイルレスリングがサッカーを押しのけて一番の人気スポーツとのこと。大会前から「最大のスターは2012年ロンドン・オリンピック銅メダリストの湯元進一」などと紹介され、湯元の一挙手一投足で会場が沸き立ったという。湯元によると、写真撮影を求められた人数は「1000人ほど」とのことで、熱狂的な歓迎ぶりだったという。
井上謙二監督(自衛隊)は「入賞した2人以外も攻めるレスリングをして、粘り強く闘えた。日本の練習では得られないものも得たと思う。ベテランの2人が勝つ姿を見て、若手は今後の試合でトップ選手を追い越せるよう力を発揮してほしい」と激励した。
ロンドン・オリンピック後初の国際大会となった湯元については「ロンドン・オリンピックの時の7~8割まで戻ってきたと思う。2kgオーバー計量の今大会(59kgで計量)でも体重の差を感じさせなかった。新ルールの対応も課題だったが、思っていたよりすんなりいったと思う」と話した。 遠征最後のアドバイスを送る井上謙二監督(自衛隊=右端)
昨年9月の世界選手権でのけがと手術を経て復帰した前田は「周りの人に心配をかけていたので、こういう場所に戻って来られ、成績も出せてホッとしています。まだ100%の練習はできていないので、天皇杯までにあげていって、オリンピックにつなげたい」と話した。
世界選手権とアジア大会が終わり、リオデジャネイロへの闘いがいよいよ始まる。日本代表決定の“最初の予選”と言える12月の全日本選手権(21~23日、東京・代々木競技場第2体育館)に向け、国内の闘いはいよいよ激化しそう。
■57kg級2位・湯元進一(自衛隊)「いこうと思えば、もっと速くテクニカルフォールで終われる試合もあったが、できる限り長く闘い、感覚を取り戻した。天皇杯で勝たなければオリンピックへの道は厳しいと思っている。決勝は地元選手との闘いで雰囲気にのまれた部分もあったが、自分の課題である部分が露呈し、はっきりと課題を認識できたことは良かったと思う。今は若手の2人(高橋侑希、森下史崇)の方が上だと思っているが、世界選手権とアジア大会の上位入賞者を見ると、自分がロンドンで闘ってきた選手達。自分もまだまだあそこにいる、やれるという気持ちだ。」
■65kg級2位・前田翔吾(クリナップ)「どうやって65kgで世界で勝てるかを考えて過ごしてきたが、練習を100パーセントでやることができず、体がついてこないで不安だった。周りの人に心配をかけていたので、こういう場所に戻って来られて、成績も出せてホッとしている。これから天皇杯に向けて調子をあげていって、オリンピックにつなげたい。勝負するために、即座に(オリンピック階級の)65kg級に上げると決めた。これからもっとよくなっていくので、自分も楽しみにしているし、周りの人にも楽しみにしていてもらいたい」