※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
日本男子の4大会連続金メダルを決め、応援席にこたえる長谷川恒平(青山学院大職)
大会を連覇し、日本男子グレコローマンでは史上初の快挙を達成するとともに、男子グレコローマンは2002年の釜山大会から4大会連続で金メダルを獲得。金メダルの伝統をつないだ。
今年4月から母校・青山学院大の職員としてフルタイムで働き、レスリング部のコーチをするかたわらで練習を積むという少ない練習時間での大会連覇だった。
初戦は無失点だったものの、2回戦のタジキスタン戦は投げ技で4点を先制された。ロンドン・オリンピックを目指していた頃の長谷川ではめったに見られない失点で、2回戦から決勝までは全試合で失点した。
練習量が足りないからか―。そんなネガティブな想像を、長谷川はきっぱりと断ち切ってくれた。「このルールだと、ある程度点数が開いても追いつける」。出合い頭に失点しても焦らず、第2ピリオドからギアを入れ替えて得点を重ねるというパターンで勝ち切った。
■元世界王者撃破も、「太田忍に負けている選手」-
圧巻だったのは決勝の北朝鮮戦だ。第1ピリオドにコーションを取られ、グラウンドから4点技を決められたが、ここでも慌てなかった。「投げ技は、みんなに研究されているので、タックルを狙った」と、“高速胴タックル”で次々とテークダウンを奪い、最後は4点タックルも決めて見せた。 決勝の序盤、バック投げで4点を失った長谷川だが…
前世界王者ユン・ウォンチョルを倒したことについては、「強い選手が(オリンピック翌年で)休んでいた2013年のチャンピオンだし、4月のアジア選手権では太田忍(日体大)に負けている選手。吉田沙保里選手から『太田君が勝っているんでしょ』と言われました。負けられないですよ」と、特別に快挙を達成したという感覚はないようだ。
「仕事、レスリング、指導と、すべて100パーセントでやりたい」。この言葉から、再び本気でオリンピックを目指す宣言を期待したが、「仕事もある。青学の学生も僕を待っています。全日本選手権に出るかどうかは、仕事次第です」と封印した。
“職業プロ”ではなくなっても“世界の長谷川”が健在であることを証明した今大会だった。