2014.09.27

【全日本大学グレコローマン選手権・特集】V2と史上7人目の快挙も、「団体優勝できずに悔しい」…太田忍、屋比久翔平(ともに日体大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(撮影=山内猛)

 全日本大学グレコローマン選手権の59kg級と71kg級は、ともに日体大の選手が8月の全日本学生選手権に続いて優勝した。59kg級が太田忍で、71kg級は屋比久翔平。両者の口からは、示し合わせたように同じ第一声が出て来た。「団体優勝できずに悔しい」-。

■「学生の大会は取って当たり前」…太田忍

■太田忍の2014年全日本大学グレコローマン選手権成績
決  勝 ○[Tフォール、0:21=10-0]井上征洋(拓大)
準決勝 ○[Tフォール、1:56=11-0]有延大輝(国士舘大)
3回戦  ○[Tフォール、1:33=9-0]金沢誠也(青山学院大)
2回戦  ○[Tフォール、0:34=8-0]田中暁大(中京学院大)
1回戦   BYE

 59kg級の太田は昨年に続く2連覇というおまけつき。学生の大会を3大会連続で制したことになり、第一人者を示したが、団体優勝を目指してこの大会に臨んだだけに、拓大に屈してしまっては喜びは湧いてこない。

 「きのうの段階で拓大に差をつけられてしまったけど、きょう4階級で優勝すれば逆転もある」と気持ちを奮い立たせて臨んだだけに、“負けた”という気持ちの方が強いようだ。「拓大の方がチーム力が上でしたね。一致団結していました」と、拓大の総合力を認めた。

 個人で考えれば、二冠制覇と2年連続優勝に喜びがないわけではない。全試合を第1ピリオドの2分以内で終わらせ、ポイントをやらなかったので、「その点では、よかったと思っています」と言う。しかし、「言い方は悪いですが、学生の大会は勝って当たり前と思っていますから」とのことで、大喜びというほどではない。

 圧勝続きの中、しいて課題を挙げるとしたら、相手に崩されてしまうことがあった点。上(全日本レベル)では通用しないと思う。OBの方たちとの練習で修正し、克服していきたい」と言う。

 今月の世界選手権(ウズベキスタン)では、今年2月のイラン遠征で練習し、「ボコボコにされてしまった」というロンドン・オリンピック55kg級王者のハミド・スーリヤン(イラン)が優勝した。練習した相手が世界一に輝いたというのは刺激になり、世界における自分の立ち位置も分かろうというもの。

 「2月は差があったけど、そのあと遠征を4回経験し、世界トップ選手との差も近づいたと思う。あの時とは違う。近づいていなければ、おかしい。2年後に勝負できない」と話した。

■「忍先輩(太田)のように圧倒的な強さで勝ち上がらなければ」…屋比久翔平

■屋比久翔平の2014年全日本大学グレコローマン選手権成績
決  勝 ○[フォール、4:10=5-0]濱口裕志(九州共立大)
準決勝 ○[Tフォール、2:18=8-0]長崎宏樹(山梨学院大)
3回戦  ○[Tフォール、2:15=8-0]近藤雅貴(専大)
2回戦  ○[5-0]中井堅太(早大)
1回戦  ○[Tフォール、1:12=8-0]澤田翔人(青山学院大)

 71kg級の屋比久も無失点での優勝で、過去7人しか達成していない2年生でのグレコローマン学生二冠王者という快挙つき(1年生二冠王を含めれば8人目)。しかし、団体優勝を逃したことで表情は今ひとつ。「グレコローマンは日体大が一番だと思っている。取らなければいけないと、だれもが思っていました。力を出せなかった」と、敗者のようなコメントから始まった。

 話を個人でのことに絞ってもらうと、「前に出られたけど、崩されると体がぶれてしまい、グラウンドではリフトをずらされて上げられないことがあった。まだ悪いところが出ている。インカレの時から直っていない」と、こちらも反省の弁。

 5試合中4試合でフォール、またはテクニカルフォールという内容であるにもかかわらず、「学生レベルでもたついていては、世界はおろか全日本でも勝てない。忍先輩(太田)のように圧倒的な強さで勝ち上がらなければならなかった」と話し、団体V逸の話の流れからなのか、威勢のいい言葉は出てこなかった。

 このあとは来月の長崎国体に出場予定だが、世界選手権代表の江藤紀友(自衛隊練馬)や、 2012年74kg級全日本王者の井上智裕(三恵海運)らがエントリーしており、全日本選手権並みの大会となる。それでも、「藤村さん(義=アジア大会代表、自衛隊)がいない分、チャンスは広がっている。しっかり勝って、課題を修正して全日本選手権に向かいたい」と、最後は前を向いた言葉で締めくくった。