※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子)
鴨居正和(山梨学院大)
6月の全日本選抜選手権で2位となり、男子フリースタイル61kg級の代表に選ばれた鴨居正和(山梨学院大)もその一人。「大きなけがもなく、調子は悪くはない」と謙そんしながらも、順調さをアピールした。
■昨年の学生二冠王者、今年は世界に挑戦!
昨年は8月の全日本学生選手権で初優勝を飾り、11月の全日本大学選手権ではV2を飾って学生二冠王者へ。学生界で無敵の強さを誇った。このまま全日本の舞台でも活躍するかと思われたが、蜂窩織炎(ほうかしきえん=ばい菌が入って炎症が起こる病気の一種)にかかって1週間の入院を余儀なくされ、12月の全日本選手権は欠場した。
全日本選手権は翌年の世界選手権代表選考を兼ねており、欠場することは痛手だ。鴨居は「今年は2番手でも代表になれる可能性があると聞いていましたが、全日本選手権に出られなかったこともあり、ナショナルチーム入りすることは考えないようにしていた」と、病気で出遅れたことから代表選考は他人事のようにとらえていた。
だが、中学、高校、大学と常にチャンピオンの座についてきた鴨居のセンスは、そのハンディをしのぐものだった。全日本選抜選手権では「目の前の試合だけに集中して」という姿勢で臨み2位に。優勝した高塚紀行(自衛隊)がアジア大会代表を希望したため、鴨居に世界選手権の出場権が回ってきた。 全日本選抜選手権決勝で高塚紀行(自衛隊)と闘う鴨居
■目標のスタイルはジョーダン・バローズ(米国)
鴨居の得意技はカウンター攻撃だ。ボクシングで言うアウトボクシングで、少し下がり気味に相手を誘い込んでから攻撃に移るタイミングは一流もの。香川・香川中央高校時代の恩師の沖山功監督は「相手との絶妙な間合いを制する能力は中学時代にすでに完成していた」と話すように、天性の能力と言えよう。
だが、レスリングには“アウトレスリング・スタイル”というものは存在せず、下がっているとコーションなど何かしらの注意を受ける可能性が高い。鴨居も「自分から攻めないといけないと思っています。高田先生(裕司=山梨学院大監督)からは、ジョーダン・バローズ(ロンドン。オリンピック男子フリースタイル74kg級優勝ほか)のような、ひざをついてのフェイントとか、飛び込むタックルを参考にしろ、と指導されました」と、攻撃スタイルの確立を目指している。
この攻撃レスリングを実戦で使うことができれば、得意のカウンター攻撃と組み合わせて、攻めてよし、受けてよしと試合展開が非常に楽になる。初出場ながら上位進出も夢ではない。鴨居は先月末の全日本学生選手権で2連覇がかかっていたが、世界選手権のために欠場した。
その分も世界選手権で暴れたいところ。「相手に合わせず、自分のレスリングを貫き通して悔いのない試合にしたい」と、世界初挑戦に向けて決意を新たにした。