2014.08.29

【全日本学生選手権・特集】最後のインカレで初の学生タイトル獲得! 男子フリースタイル61kg級・中野晶太(日体大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)

 兄と同じ学生チャンピオンへ! 全日本学生選手権の男子フリースタイル61kg級は、日体大のフリースタイル主将、中野晶太が同門対決となった決勝で後輩の中田陽を6-1で下して優勝した。決勝は、序盤は静かな展開だったが、後半で一気に突き放した。

 中野は「(相手が)後輩だったから負けられなかった。4年の意地が出ました」と喜びを表し、「自分の攻撃からの得点ではなかったので、不本意な部分もあったけれど、優勝しか考えず、1試合1試合を取り組んだことがよかった」と、念願の学生タイトルをかみしめた。

 中野の兄・智章も2011年のグレコローマン55kg級で優勝しており、兄弟そろって学生王者の座に就いた。「兄が結果を残して、自分はこれまで結果を残していなかったので、今回は優勝は意識していました」。これまで新人選手権などを含めて“優勝”がなかっただけに、無冠返上に加えて兄弟優勝を達成し、喜び2倍の優勝だった。

 静岡・焼津中央高出身。先輩にはロンドン・オリンピック代表の長谷川恒平(青山学院大職)がいる。兄も含めてグ ラウンド攻撃が得意な選手たちに囲まれて練習を積んだため、もともとローリングは得意だった。しかし、フリースタイルは自力で相手のバックを取らないとローリングを仕掛けることはできない。「バックを取ったら勝てる」を実行するため、最後のインカレに向けての今月中旬の草津合宿(群馬)では、片足タックルとハイクラッチタックルの処理を重点的に磨いたという。

 その効果が出て、全日本選抜選手権3位の阿部隆宏(国士舘大)に8-1、昨年の全日本大学選手権60kg級2位の有元伸悟(近畿大)にも12-4と快勝。特に阿部はこれまで2戦2敗の相手で、苦手意識があった。「同じ相手に3回負けるのは嫌なので、意識して闘いました」と、最高の舞台でリベンジに成功した。

 これで、11月の全日本大学選手権で学生二冠王者に挑戦する権利を得たことになる。だが、その質問を投げると、中野の表情が厳しくなった。「その前に、日体大の代表に選ばれることが大切です。今回、後輩の川瀬(克祥)がけがで欠場していました。川瀬が出場していたら、この優勝もどうなっていたか分かりません。部内(の闘い)でしっかり勝って、代表になりたいです」。

 現在のところ、本格的なレスリング競技は学生までと決めている。日体大の主将という肩書に恥じぬよう最後の学生大会で有終の美を飾れるか―。