※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
今季4冠目を獲得した藤波勇飛(三重・いなべ総合学園)
全試合フォールかテクニカルフォール勝ちは、今年の全国高校選抜大会とインターハイでも実現しているが、専門外のグレコローマンでも同じような内容で優勝できるとは、本人も周囲も思っていなかったのではないか。
一昨年、昨年と世界カデット選手権に出場したため、8月半ばにあるこの大会には出場しておらず、今回が初出場。当然、昨年までグレコローマンの練習を積むことはなく、今回が初のグレコローマンの大会。決勝では、胴タックルやグラウンドで相手を持ち上げてからローリングがよく決まり、ポイントを重ねた。 藤波自身が「時間に助けられなければフォールされていた」と振り返るシーン
決勝では第1ピリオドの最後に首投げを受けてしまい、完全に押さえ込まれてしまう場面があった。「時計が見えて、『(残り時間が)あと少しだ』と思った瞬間に投げられました。油断ですね。時間に助けられました。そうでなかったらフォールされていたと思います」。圧勝続きの中で唯一の反省材料。フォールに結びつく投げ技の怖さ、特に“終了間際の一発”の怖さを知ったことだろう。
「グレコローマンの技術を知っていれば、フリースタイルに役に立つと思います。このあとは国体で勝ち、全日本選手権です。1勝できるように頑張ります」。大会後はフリースタイルの練習に戻り、終盤に入った高校でのレスリング生活を燃えるつもりだ。 脚へのタックルはできなくとも、胴タックルからテークダウンを奪う藤波
今年は夏までに全日本合宿に何度となく参加させてもらった。同監督は「これが大きかったですね」と成長の要因を振り返った。さらに、「できなくても勝っていく、という対応力や勝負強さを持っていることを知って、ホッとしました」と、専門外の闘いでも勝ち抜いた長男をさらに頼もしく感じた様子だ。
「全日本選手権では、○しょうを目指させます」-。入賞か優勝かはっきり聞こえなかったので、聞き返すと、「優勝です」と力強く言い切った。