※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
ポーランドへ向かった男子フリースタイルの全日本チーム
空港まで見送りに来た和田貴広・男子フリースタイル強化委員長(国士舘大教)は「世界選手権を40日後に、アジア大会を50数日後に控え、もう一度国際試合の感覚を思い出し、自分のやってきたことが外国選手にどの程度通じるかを確認してもらいたい。世界選手権やアジア大会、さらにリオデジャネイロ・オリンピックで対戦するであろう選手と闘ってほしい。そうでなくとも、試合以外でも(練習場で)手合せしてほしい」とリクエスト。
遠征の理想は「他国と合同練習して試合に臨むこと」だというが、今回は大会参加だけの遠征。過去の経験からして、この大会が“世界選手権の前哨戦”としてかなりハイレベルであるのに対し、世界選手権前で手の内を隠す心理が働くのか、大会前の合宿はそう高いレベルではないそうだ。「大会だけに集中させたい」として決めたという。
「持っているものをすべてぶつけ、勝ちにこだわってほしい」と話す一方で、「けがには気を付けてほしい」と注意をうながした。 ポーランドへ向かう選手にアドバイスを送る和田強化委員長
■縁起のいいユース・オリンピック・イヤー…57kg級・高橋侑希(山梨学院大)
世界選手権57kg級代表の高橋侑希(山梨学院大)は「海外は2月のイラン遠征以来。勘が鈍っているようなことはないと思うが、世界選手権につながる内容を残したい。けがはしたくないが、けがを恐れていたら自分を出せないでの思い切ってやりたい」と気合十分。
ライバルで6月の全日本選抜選手権で2連勝した森下史崇(ぼてぢゅう&Bum’s)が今月初めの世界学生選手権で優勝するなど、刺激材料もある。「国内で勝っても仕方ない。世界で勝たないとならないでしょう。強気で自分から攻めたい」と言う。
来月は中国・南京でユース・オリンピックが開かれるが、高橋は4年前の第1回大会に出場して金メダルを取っている。「もう4年ですね。懐かしい」と話しつつ、それにあやかっての好成績を期した。 スポーツ紙から取材を受ける小島豪臣(神奈川・中原養護学教)
日本代表になっても環境は変わらず、練習時間はなかなかとれない毎日だったが、夏休みに入って少しはとれることになった。この遠征を機に練習量を増やし、体力を取り戻したい意向で、「いきなりアジア大会というのより、ここで一回、国際大会を経験できるのはいいことだと思う」と話した。
■アニメ・オタクへの偏見を変えてやる!…125kg級・岡倫之(ブシロード)
125kg級で世界選手権代表となった岡倫之(ブシロード)は、つい最近、サンボの世界選手権代表に内定し、2つの世界選手権に挑むことになった。まず挑むレスリングでは、「ハイレベルの大会だと思うので緊張しています。一時はあきらめていた世界選手権出場だけに、全力を尽くして頑張ります」ときっぱり。
世界選手権前のこの時期に国際大会を経験できることは、課題に取り組んでから世界選手権に挑めるメリットがあるので、「このチャンスを有意義にしたい」と言う。
熱狂的なアニメ・ファン、アニメ・オタクを公言している岡にとって、最近、残念なことがあった。岡山県で小学5年生の女児を誘拐監禁して逮捕された49歳の男が、部屋中に少女アニメを飾るなどの“アニメ・オタク”と報じられたこと。アニメ・ファンがすべてそうであるかのような報道に腹を立てている。
「悪いことをした人の部屋が車の本ばかりだとしても、『車オタクは…』とは報じないでしょ。なぜ、アニメの場合はそうなるんですか。アニメ・オタクが悪いような扱いはおかしい」と、根底にあるアニメへの偏見に納得がいかない様子。そこまでアニメ・ファンを特別視するのなら、自身が5月の新日本プロレス横浜大会で暴漢を取り押さえた時、「『アニメ・オタクが暴漢を逮捕』って書いてほしかったですよ」と言う。
「自分を貫きます!」。アニメ・ファンに対する偏見を変えるためにも、世界選手権でいい成績を残したいそうで、「そのためにも、この大会を頑張ってきます」と話した。
遠征メンバーは下記の通り。
【監督】鈴木豊(自衛隊)、【コーチ】松永共広(日本協会専任コーチ)
【帯同審判】矢後眞直(千葉・柏四中教)
【選手】
▼57kg級 高橋侑希(山梨学院大)、森下史崇(ぼてぢゅう&Bum’s)
▼61kg級 高塚紀行(自衛隊)、鴨居正和(山梨学院大)
▼70kg級 小島豪臣(神奈川・中原養護学校教)、保坂健(早大)
▼74kg級 嶋田大育(国士舘大)
▼86kg級 松本篤史(ALSOK)、松本真也(警視庁)
▼97kg級 鈴木聖二(岐阜・岐阜工高職)
▼125kg級 岡倫之(ブシロード)