※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) シニアの大会で初の優勝を飾った角雅人(自衛隊)
角は「社会人初優勝です」と一度は笑顔を見せたが、すぐさま唇をかみしめ、「課題が多すぎる試合でした」と反省の弁を繰り返した。
角は、昨年のJOC杯で高卒入隊の自衛隊選手として史上初となる優勝を決めて注目され、今年の4月は新階級の80kg級でアジア選手権に出場するなど経験を積んでいる若手成長株。6月の全日本選抜選手権では、84kg級から階級を落としてきた鶴巻宰(自衛隊)に敗れて2位だったが、日本協会が秋のアジア大会と世界選手権の代表選手を二手に分けることを決めたため、2位の角が世界選手権代表に抜てきされる形となった。
全日本選抜選手権で2位に終わった時点で、「鶴巻先輩との実力差があったので、代表入りは難しいと思っていた」そうだが、悲願の代表入り。今月下旬には、アゼルバイジャンで行われるゴールデンGP決勝大会のメンバーにも指名されており、吉報続きだ。だが、手放しには喜べなかった。「選ばれたことはうれしいのですが、今日のような試合内容だと、世界では通用しないと思っている」と自分の実力を客観的に分析した。 決勝で闘う角
海外で勝てるようにするための最大の課題はメンタル面だ。「実は、あがり症なのです。今日も初戦から緊張して、相手の首投げを開始早々受けてしまって4失点してしまいました。いつも大きな失敗をするのは初戦なのです」。
拍車をかけたのが、“世界選手権代表”という肩書。多方面から「世界選手権代表なのだから負けられないよな」と声をかけられたことで、さらにあがってしまったそうだ。あがり症を克服するため、ふだんの練習から緊張感を持ってスパーリングをするなど努力はしているものの、「経験を積んでいくしかないでしょう」と話した。
今大会に優勝したことで、秋には社会人選抜メンバーでニューヨーク遠征に選ばれることも決まった。12月の全日本選手権までに、少なくとも3大会の海外遠征が予定されており、経験を積むにはもってこいの状況。角は「ゴールデンGPと世界選手権で上位進出し、二回りほど成長したいです」と、夏から秋にかけて実戦を重ね、メンタルの弱さの克服を目標に掲げた。