※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫) 優勝を決め、ガッツポーズの坂上嘉津季(至学館大)
とはいえ、簡単に優勝を手にしたわけではない。1、2回戦は自分のレスリングができず、栄和人監督から「世界選手権がかかっているぞ。死ぬ気でいけ!」と激励されて決勝のマットに上がった。相手はかつて“女王”吉田沙保里(ALSOK)を苦しめ、次代を担う選手として期待を集めるホープの村田夏南子(日大)だった。
55kg級からクラスを上げ、世界選手権出場を目指す村田と、59kg級を主戦場にしてきた坂上。両者の意地が激突した試合は、リードする坂上に村田が食らいつくという展開へ。「(下の階級から上げてきた選手に)負けられないという気持ちがあった」という坂上は、積極的に技をかけて村田に主導権を渡さず、最後は17-6と突き放して栄冠を手にした。 村田夏南子(日大)の猛攻をしのぐ坂上
坂上は全試合に出場し、強豪を相手に全勝をマーク。「今まで海外で試合したことはあまりなかった。団体戦だけど、全部試合に出してもらって、自分も世界で闘えるという自信になった」と大きな手ごたえをつかんだ。
現在は教員免許取得を目指し、東京の文化学園大学杉並中学校で教育実習中。1週間の実習後、今大会のために休みをもらい、大会2日後から再び教育実習に励むというハードスケジュールだが、限られた時間でしっかり練習して今大会の結果につなげた。「いまは自信を持って練習している」と頼もしい21歳。充実期を迎えつつある坂上はいま大きく飛躍しようとしている。