※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫) 2年ぶりに世界へ飛び立つことが濃厚な松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)
全日本選手権で敗れた後、「モチベーションを上げづらかった。競技生活を終えるのか、指導を中心にしながら自分も続けていくのか、考えていきます」と話した。ロンドン・オリンピックが自分にとって競技の集大成だったからだ。
だが、状況は変わっていく。群馬ヤクルト販売で仕事を続けながら、2013年春から1週間に一度、群馬大学・大学院の医学系研究科で器官代謝制御学も学び始めた。内容については割愛するが、松本自身も、アスリートとして血液採血などに率先して協力することで、研究に貢献しているという。 プレーオフでも全日本王者を寄せ付けなかった
確かにロンドン・オリンピックが競技の集大成だった。だが、レスリングに向き合うことを考えているうちに、「競技だけをしていていいのだろうか?」という考えに変わっていったのである。「リオデジャネイロ・オリンピックを目指す」という明言は避けたが、「自分にオリンピック代表の座を奪われてたまるか、という気持ちを後輩たちが強く思ってくれれば、この階級も日本のレスリング界も発展していく」と語った。
ロンドン・オリンピック代表メンバーの活躍が目立った今回の全日本選抜選手権。松本は勤務先や大学院の先生方が理解してくれているおかげで、練習の時間もとれる。先駆者たちは、まだまだ若手の壁となっていく。