2014.06.18

【全日本選抜選手権・特集】4年前の口惜しさ悔しさ晴らす…男子グレコローマン75kg級・金久保武大(ALSOK)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

《決勝VTR》

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)

 全日本選抜選手権の男子グレコローマン75kg級は、金久保武大(ALSOK)が苦しみながらも2年連続5度目の優勝を飾り、アジア大会へのキップを手繰り寄せた。

 昨年の世界選手権74kg級代表の金久保に決勝で挑んできたのは、世界選手権66kg級代表の清水博之(自衛隊)。全日本合宿でも「よくスパーリングをする仲」(金久保)で、手の内を知り尽くしている相手だ。

 「接戦になると思っていた」との予想通り、2012年のこの大会の74kg級優勝者でもある清水は闘志をむき出しにして襲いかかってきた。それでも金久保は「1点を大事にしていこうと思った」と、リードした局面から清水の猛攻を冷静にしのぎ、3-2の小差で優勝。安堵の表情を浮かべた。

 金久保は「誰にも負けられないという気持ちがいい方向に作用している部分と、逆にいつもの動きができなかった部分がある」と胸中を明かした。

 金久保はこれまで世界選手権には3度出場しているが、アジア大会代表に決まれば、初めての出場となる。前回のアジア大会(2010年、中国)は、あと一歩のところで出場を逃した。選考会となるこの大会で優勝を飾りながら、プレーオフで鶴巻宰(自衛隊)に敗れ、つかみかけたキップを手放してしまったのである。

 「アジア大会は4年越しの思いがある。初めての総合大会でもあるし、自分の気持ちを存分にぶつけたいと思う」。アジア大会に強い思いを抱くのも当然だろう。

 借りを返したいのはアジア大会だけではない。昨年の世界選手権では、初戦でロンドン・オリンピック銅メダリストのリトアニア選手を下す幸先いいスタートを切りながら、次の試合では、スコアボードの誤表示でポイント計算が狂ったこともあり、不完全燃焼のままメダルには手が届かず敗れ去った。

 「もし出してもらえるのなら、両大会ともメダルを目指して頑張りたい」。国内での優勝はもう十分。あとは世界での結果、そしてオリンピックへのパスポートだということは本人が一番分かっている。