※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 3年ぶりの全国王者を達成した井筒と元全国高校王者の父・忍さん
決勝は、序盤に相手のタックルをつぶし、バックに回って2点を先制。鉄壁のディフェンスでその2点を守った。最後は基山のラッシュ攻撃に対し、守りに徹してコーションまで取られてしまい、同点とされてしまった。それも計算してのこと。小学生6年生の2011年以来の全国チャンピオンに、両手でガッツポーズが飛び出した。
相手の基山は全国少年少女選手権を7連覇し、2011年の全国少年少女連盟選出の年間最優秀選手。キッズ・レスリング界でまぎれもないスター選手だ。その基山に西日本大会と今大会で2連勝したのだから、喜びはひとしお。
「西日本の大会でも6-2で勝ったのですが、全国で優勝したわけじゃない」と、派手なガッツポーズを今回のためにとっておいたそうだ。今回の優勝は、2回分の喜びの爆発だった。 喜びのガッツポーズのあとは、うれし涙!
今回は和歌山勢が台風の目となった。決勝に進出したのは38kg級の田中開偉(和歌山・下里)、53kg級の山口海輝(和歌山・那智)と59kg級の井筒の3選手だ。3人のうち、決勝に最後に登場したのが井筒。前に出場していた田中と山口は惜しくも敗れて2位だった。
同門が立て続けに敗れた上に、目の前には強敵の基山がいる。悪いムードが漂ったが、勝ちにこだわるレスリングで競り勝った。和歌山では来年の国体開催に向け、キッズからシニアまで全体的にレスリング強化に取り組んでいる。その効果がてきめんだったと言えよう。
井筒には兄、諒がいて、霞ヶ浦高(茨城)でレギュラー選手として活躍中。3月の全国高校選抜大会では団体優勝の中心メンバーだった。父親の忍さんは霞ヶ浦高の黎明期を支えた選手で、1986年に霞ヶ浦高がインターハイで初優勝を飾った時の優勝メンバー。個人戦の75kg級でも優勝している。親兄弟ともに全国優勝経験者だ。
井筒も、父や兄の背中を追って霞ヶ浦高への入学を希望している。「父に小学4年の時に霞ヶ浦高校に連れて行ってもらいました。すごく楽しくて、霞ヶ浦へ行けば強くなれると思った」。全中王者の肩書におごらず、「目標は高校1年でインターハイ王者です」と、来年以降のさらなる飛躍を目指す。
![]() 1986年インターハイ団体優勝の霞ヶ浦。左から3番目が忍さん(日本協会80年史より=提供・霞ヶ浦高) |
![]() 来年の和歌山国体に向けて燃える和歌山県から4選手がメダル獲得 |