※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 2連覇を達成しMVPの服部大虎(茨城・笠原)。後列右が父・克治さん
劇的な優勝だった。序盤に2点を失い、終始追いかける展開だった。服部は攻撃を仕掛けるも、なかなか得点に結びつかない。時間は残り15秒。試合終了が迫っていたところだった。「先制されても、最後に取れると思っていたので気にしていなかった」と振り返る服部は、最後の攻撃に飛び込んだ。1回、2回…。タックルを何度も持ち替え、ラスト5秒でテークダウンの2点を奪取。同点に追いつき、ラストポイントによって逆転に成功。劇的な大逆転劇に、この大会一番の歓声が沸いた。
昨年覇者ということで各選手からマークされていた。父親の克治さんが「だいぶ研究されていた」と話すように、昨年よりも苦しいトーナメントだった。決勝の田中とは、昨年(38kg級)の準決勝で対戦し、服部がわずか1分37秒でテクニカルフォール勝ちを収めていたが、今回はラスト5秒までリードを許してしまった。 決勝戦、終了間際にタックルを決めた
試合内容に満足していないが、最優秀選手賞に選出されたことには、「3年生で最後の全中だったので、最優秀選手賞を取れたことは、かなりうれしい」と話した。激戦区の男子軽量級で大会を連覇したことが評価されての栄冠だったようだ。
タックルを生命線に勝ち抜いた服部の次の目標は、7月の世界カデット選手権(スロバキア)。「タックルを使って、日本人らしい試合で優勝できるようにしたい」と目を輝かせた。
来年はいよいよ高校生に進学する。まだ、進路は具体的に決定していないが、本人と父親は「高校でも続けます」と口をそろえる。父・克治さんは「基礎をしっかりやって、高校でもしっかり勝てるような選手になってもらいたい」と、中学MVPをステップに成長することを期待していた。