2014.06.02

【関東高校大会・特集】最強キッズだった阿部敏弥(東京・帝京)が高校で復活の序章

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

 高校に入って2度目のタイトル獲得! 高校関東大会の男子フリースタイル50kg級は、JOC杯カデット46kg級優勝の阿部敏弥(東京・帝京)が決勝で齋藤僚太(埼玉・花咲徳栄)を2-2のビッグポイント差で下して初優勝を遂げた。

 キッズ時代に全国少年少女選手権7度優勝するなど“最強”の異名を取った阿部。その実績を引っ提げてJOCアカデミーに入校したが、中学は彼にとって思い描いていた青写真と全くかけ離れたものだった。

 全国中学選手権大会はまさかの無冠。3年間で獲得した全国タイトルは、秋に行われる全国中学選抜大会を1年時に優勝した1冠のみ。「いつも同じ相手に負けていて、大変だった…」。キッズタイトルを総なめにした阿部にとっては、辛く、悔しい3年間だったに違いない。

 だが、高校入学という区切りを阿部はうまく利用した。「高校生になって、新しい舞台に入った。中学より厳しくなると思うけど、頑張ろうと思っている」と心機一転、初心に戻って試合に臨んだ。

 メンタルだけではない。ここ最近はパワーをつけるために筋トレなども今まで以上に励み。そして練習も積極的に近隣の高校に出向き、実践的なトレーニングを積んできた。「決勝では、最後ばててしまいましたが、練習の効果は出ていたと思う」と反省を交えながら手ごたえはつかんだ様子。

 キッズ時代は、水戸スポーツ少年団に監督であり、父である敏明さんと二人三脚で強くなった。この日の帝京は3選手が同時に決勝を闘ったためセコンドが足りず、敏明さんが4年ぶりにセコンドにつくサプライズも。父の目の前で1年生で関東チャンピオンを決めて見せた。

 見事優勝したが、厳しい父は健在。阿部は「褒められることよりも、最後、守っていたことをダメだしされてしまった」と苦笑いを浮かべた。

 晴れて関東王者になっても、高校最大のビッグイベントであるインターハイへの出場は決まらない。全国の切符は、東京都予選で1位になることが条件。そこでクリアしなければならない条件は“同門対決を制する”ことだ。

 「同期の乙黒拓斗に勝たなければなりません。今回はアジア・カデット選手権の予選の関係で出場していないのですが、勝てるように頑張りたい。そして、本戦に出られたら優勝したいです」。同期に全国の切符を譲るわけにはいかない。

 全国の頂点を目指すその目は、キッズ時代に培った鋭い視線のまま。「優勝する感覚は少しずつ戻ってきました」と“勝つくせ”を取り戻した阿部。この勢いでインターハイの切符をつかめるか-。

決勝で闘う阿部 JOCアカデミー優勝選手。左から60kg級優勝・乙黒圭祐、阿部、66kg級優勝・梅林太郎