※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫) 山梨学院大戦の57kg級、高橋侑希と大激戦を演じた山崎達哉(日体大)。ここを取っていれば、日体大の流れになったかも…
国士舘大戦は57kg級の新人、樋口黎(茨城・霞ヶ浦高卒)を61kg級に起用し、60kg級全日本3位の阿部宏隆にぶつける布陣。国士舘大の和田貴広監督も周囲も驚いた起用だが、実は61kg級の中田陽が前の試合で歯を折ってしまい、闘える状況ではなかたための苦肉の策だったという。
しかし樋口が期待にこたえ、57kg級に続いての白星をマーク。ここまでは作戦がぴたりと当たった。松本慎吾監督は「65kg級で敗れ、流れが国士舘に行ってしまいましたね…」と、好スタートを生かせずに残念そう。
山梨学院大戦は、6-1で勝てば優勝、5-2の場合でも内容で上回る可能性が高く、優勝が転がり込んでくる状況だった。「優勝の望みにかけて勝負を挑んだ」が、そこまで全勝の山梨学院大の勢いを止めることはできなかった。
全勝同士で最終戦を闘うのと、1敗を喫して全勝のチームに臨むのとでは、気持ちの違いがあるのは確か。「きのう(国士舘大に)取りこぼしたのは、弱い部分があったから。1敗もしていない山梨学院大の方が、力が上だった」と、相手の強さを認め、V逸を振り返った。
グレコローマンでは抜群の戦力を持つ日体大だけに、次の団体戦である全日本大学グレコローマン選手権(9月)での優勝はかなり高い確率だが、松本監督は就任以来、「年間の3大会(あとひとつは全日本大学選手権)を制するまでは優勝しても胴上げは受けない」と宣言している。今年も監督の体が宙を舞うシーンは見られないことになった。
「(団体三冠は)難しいけれど、難しいからこそ、やりがいがある。また、三冠が最終目標じゃない。世界で勝てる選手を育てるため、これからも徹底して攻撃レスリングに取り組んでいきたい」と、最後は世界を目指す指導者の顔になり、再起を誓った。