※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=池田安佑美) 日体大戦で値千金の白星をマークした金城希龍(国士舘大)
予選リーグでは強豪・拓大と同グループ。昨年までは予選リーグで1敗しても、まだ優勝への望みはあったが、今回は予選リーグでの1敗は、即5位以下が決定すると言っても過言ではない厳しいシステム。「グループ1位で抜けること」が最低限の目標だった。
その拓大戦を5-2で勝って予選リーグを突破すると、その勢いは止まらず各グループを1位で通過した大学によって行われた決勝リーグの1~4位グループ戦でも、長年苦手としていた日体大に17年ぶりに白星。山梨学院大には1-6で敗れて優勝は逃したものの、山梨学院大の小幡邦彦コーチから「(2位になった)国士舘大にも6-1で、圧勝した感じがあるが、内容はほとんどきん差で危ないところもあった」と言わしめた。
王者・山梨学院大からも一目置かれた国士舘大だが、実は選手の台所事情には不安があった。重量級の柱、長知宏がけがで戦線離脱。4月のJOCジュニアオリンピックは出場したが、今回は大事をとってエントリーしなかった。
そんな長に代わって出場したのが、スーパールーキーの奥井眞生(和歌山・和歌山工高卒)だ。和田コーチが「向上心もあり、力を出し切ってくれた」と評価するほど大車輪の活躍を見せた。山梨学院の亀山晃寛には敗れたが、各大学のエース級の重量級と対戦して4勝1敗の好成績は立派。
人材豊富な国士舘だが、今回は「奥井のほか、57kg級の大城(一晟=沖縄・浦添工高卒)ら1年生を使わざるを得ない状況だった」のが実情。「ちょっと無理させて、こんな厳しいリーグで頑張ってもらって、しかも助けてもらった」とルーキーたちの労をねぎらった。
2位という結果は「優勝を逃した」ととらえる人もいるだろう。だが、和田監督にそのような悲壮感はなかった。「今回はルーキーだけでなく、実力以上の力を発揮してくれた選手がたくさんいた。予選リーグを1位で抜けたことは評価できるし、決勝リーグの内容も満足しているので、今回はよしとしたい」―。
嶋田主将や日体大戦で値千金の白星を挙げた金城希龍らが抜ける来年も、今年の主力が多く残る国士舘大。来年への下地が確立した大会となったに違いない。