※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=池田安佑美、撮影=矢吹建夫)
2年連続5度目の優勝を達成した山梨学院大
“留学生頼み”から脱却して、ぶっちぎりの優勝! 新方式で行われた東日本学生リーグ戦は、山梨学院大が決勝リーグの最終戦となる日体大戦を5-2で勝ち、リーグ戦全勝で大会を連覇。通算5度目の優勝を決めた。
山梨学院大は予選リーグを難なく1位で突破し、決勝リーグでも国士舘大、日大、日体大を相手に、ともに大差で勝利。昨年はカザフスタンからの留学生、オレッグ・ボルチンを120kg級に据えて、強豪相手に4-3という接戦をものにし続けての優勝だった。
今年は一転。学生トップ選手の高橋侑希、鴨居正和を中心に軽中量級で白星を重ね、125kg級のボルチンに勝負を託すことなくチームの勝利を決め続けた。
小幡邦彦コーチは「全員で勝ち取った優勝。昨年優勝してから、ずっと『2連覇する』と選手に言い聞かせてきた。今回は自分たちのスタイルができたんじゃないかな」と感慨深げ。
■ボルチンがいたから勝てた? 悔しかった昨年の優勝
2連覇の原動力となったのは、“黒船”と言われた最強留学生、ボルチンの存在をチクリと言われたことだった。山梨学院大はもともと国際交流が盛んな大学で、レスリング部以外でも陸上などで留学生を多数受け入れている。だが、その留学生を中心に勝ったため、「留学生頼み」と揶揄(やゆ=からかう、皮肉る)されてしまっていた。
6試合で5勝1敗と中量級を支えたルーキー、木下貴輪
小幡コーチは、「周囲に、去年の優勝は『留学生のボルチンがいたから4-3で勝てたんだ』と言われて…。悔しかったので、今年はぶっちぎりで勝つぞ、と言い聞かせていました」と振り返る。
山梨学院大に追い風が吹いたのは、大型ルーキーの大活躍だ。57kg級には、高校時代にグレコローマンながら世界カデット選手権で優勝した小柳和也(山梨・韮崎工高卒)、70kg級には高校三冠王の木下貴輪(鹿児島・鹿屋中央高卒)を起用した。特に木下は全6試合に出場して5勝1敗と大暴れだった。
「もともと新入生たちを使うつもりでいました。木下は、まだ相手のほうが、強いかなと思いましたが、のびのびやってくれて、いい収穫になりました」と、その活躍ぶりに小幡コーチも目を丸くした。
■選手層の厚さを生かして思い切ったオーダーで優勝決めた
小幡コーチは当初、昨年の中量級の要だった濱本豊主将が抜けた穴をどう埋めるか悩ましかった。そこで、4年生の朝比奈健人の成長を買って、57kg級に朝比奈、61kg級に57kg級の高橋を起用。鴨居主将を65kg級に据えた。
下馬評通りの強さで2連覇を勝ち散った選手たち
これがピタリとはまり、朝比奈は4戦全勝、うち3試合は朝比奈の勝利から一気に4連勝して試合が決まるなど切り込み隊長としての役割を十分に果たしたことも大きかった。鴨居主将は「同じ4年の朝比奈とともに戦えて優勝できたことがよかった」と振り返った。
勝利数だけ見れば圧勝のイメージがあったが山梨学院大だが、内容は決して大差ではなかった。これは、小幡コーチの「相手が強くても、粘れば絶対チャンスが出る」という指導方針にのっとり、勝利を一つ一つ積み重ねてた結果だ。
競り勝てた要因を鴨居主将は「練習でも試合のように点数を計算しながら練習してきました。スパーリング終わってから30秒間、一人が攻めて一人が守るという練習を取り入れて、詰めの甘さを修復してきました」と話し、ラストの勝負強さの秘訣を話した。
決勝戦では、鴨居主将をはじめ、複数の選手が日体大に同点、もしくは2点差などに追い上げられながら、競り勝ったのは練習から試合終盤のシュミレーション練習を取り入れていたことが大きかったようだ。
ぶっちぎりの優勝を飾った今回のメンバーの中で半分以上が来年もある選手だ。もちろん、来年も優勝候補最右翼だろう。鴨居主将は「まだ山梨学院大は3連覇がない。ぜひ成し遂げてほしい」と後輩にエールを送っていた。