2014.05.26

【展望】東日本学生リーグ戦/一部リーグ予選グループ

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

昨年優勝の山梨学院大チーム

 東日本学生リーグ戦は5月27日(火)~29日(土)に東京・駒沢体育館で行われる。

 今年からリーグ戦のシステムが変わり(4大学ずつの予選リーグ4組を実施し、1位同士、2位同士…が決勝リーグを闘う)、初日から優勝にかかわってくる試合も出てくる。昨年までのように、最終日に向けて調子を上げていくことができず、様変わりのリーグ戦となりそう。

 一部リーグの見どころをさぐった。(日体大・日大・国士舘大=増渕由気子/山梨学院大・早大・拓大=樋口郁夫)


《大会要項》《対戦表・試合日程》《各大学エントリー選手》


◎予選A組(山梨学院大、専大、青山学院大、東農大)

 昨年優勝の山梨学院大は、軽量2階級(57kg級=高橋侑希、61kg級=鴨居正和)と重量2階級(86kg級=亀山晃寛、125kg級=オレッグ・ボルチン)にポイントゲッターを擁し、70kg級に強豪新人の木下貴輪が加わって力強い布陣。

 専大は、ベストメンバーなら山梨学院大のが城に迫れる戦力だろうが、2月のデーブ・シュルツ国際大会(米国)で前述の鴨居正和を破った全日本学生選手権2位の伊藤和真を負傷で欠くのは痛い。青山学院大が全日本大学選手権74kg級3位の松田健吾らの奮戦で、戦力の落ちた専大を破れるか。

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《山梨学院大》
※5月20日掲載: 「【特集】4選手が安定! 盤石の布陣でリーグ戦連覇を目指す山梨学院大」 参照


◎予選B組(早大、日体大、神奈川大、法大)

 昨年のリーグ戦で2位、全日本大学選手権で優勝の早大と、コンスタントに優勝を目指せる戦力のそろう日体大がそろった。早大は74kg級に保坂健、125kg級に前川勝利という全日本レベルの選手をそろえ、日体大は逆に軽量級が充実。

 両チームの対戦の勝者がグループ1位となるのは間違いないだろう。

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《早大》
※5月22日掲載: 「【特集】早大運動部の新たな出発! レスリング部はリーグ戦Vで花を添えられるか?」参照

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《日体大》
 一昨年、一部リーグ返り咲きのシーズンで復活優勝を遂げたが、昨年はグループ3位と後退してしまった。今年は王座返り咲きに燃えている。松本慎吾監督は「目標はいつも通り優勝です」と、例年どおり優勝だけを見据えた練習と調整に手ごたえを感じている。

 予選リーグで昨年2位の早大が最大のライバル。松本監督も「優勝を狙うには負けられない相手」と気を引き締める。

 昨年の55kg級学生二冠王者の森下史崇が抜けたことで軽量級の戦力が気になるが、スーパールーキー、樋口黎(茨城・霞ヶ浦高卒)の加入により、戦力ダウンはなさそう。松本監督は「樋口が入ったことにより層の厚みが出た。樋口にはチームの流れをつかんでほしい」と、ルーキーながら何試合かの起用を視野に入れている。

 61kg級は中野晶太主将(静岡・焼津中央高卒)とJOC杯2連覇の中田陽(兵庫・育英高卒)の併用、65kg級には60kg級全日本選手権2位の川瀬克祥(三重・いなべ総合学園高卒)、70kg級は昨年秋の新人戦で両スタイル優勝を果たした中村百次郎(佐賀・鹿島実高卒)が出場するか。

 エントリーには、昨年の世界ジュニア選手権男子グレコローマン66kg級銅メダルの屋比久翔平(沖縄・浦添工高卒)などグレコローマンの選手の名前も見られる。松本監督が専門外のフリースタイルで全日本学生王者や全日本王者になった経歴を持つだけに、「自分の形にはめれば、フリースタイル、グレコローマンは関係ない」と話し、70kg級の屋比久にも期待を寄せていた。


◎予選C組(日大、中大、明大、東洋大)

 日大が61kg級で池田智、125kg級で山本康稀という全日本選抜選手権の優勝経験者を擁し、一歩リードしていることは間違いない。全日本学生選手権66kg級3位の新川武弥や、新人の白井勝太らを加え、かなりの確率で1位を手にしそう。

 中大、明大という伝統大学はそのが城に迫れるか。

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《日大》
 昨年は日体大を4-3で破ってグループ2位。今年は、2011年に1年生で大学王者になり、全日本レベルの大会でも活躍してきた61kg級の池田智(京都・京都八幡)が主将となり、満を持して最後のリーグ戦に挑む。大きなけが人はなく、100パーセント戦力で臨めそうだ。

 昨年まで重量級で不動のエースだった岡倫之が卒業したが、61kg級の池田と125kg級の山本康稀(埼玉・花咲徳栄高卒)の元全日本選抜王者が在籍しているのは心強い。富山英明監督は70kg級で世界学生選手権の代表に抜てきされた新川武弥(京都・網野高卒)ら4年生の最後の闘いに期待をかける。

 今年の日大には即戦力のルーキーが多数加入した。ビッグネームは86kg級にエントリーされた白井勝太(東京・帝京高卒)。JOCアカデミーの一期生で、6年間のエリート教育を受けて中学・高校と数々のタイトルを手にしてきた選手だ。池田、山本、新川に次ぐ白星を十分に期待できる選手になりそうだ。

 また2012年のインターハイで茨城・霞ヶ浦高を破って団体優勝を遂げた埼玉・花咲徳栄高のレギュラーで、個人戦でも全国高校選抜大会2位などの実績を持つ前田頼夢も加入(57kg級)。富山監督は「新人も大いに期待ができる」と話し、上級生とルーキーの力がかみ合えば、リーグ1位通過は言うまでもなく、決勝リーグでも勝ち上がる力はあるだろう。

 富山監督は他大学の実力をふまえて。「全試合、接戦になると思う。そこで勝つためには最後は気持ちの問題」と選手たちを鼓舞していた。


◎予選D組(拓大、国士舘大、大東大、群馬大)

 昨年、同じグループで闘い、2位だった拓大と3位だった国士舘大が今年も同じブロックで闘う。両チームの勝者が1位となる可能性は高い。

 拓大は96kg級高校四冠王者のスーパールーキーの園田平(滋賀・日野高卒)がひざの手術で戦線離脱となったが、リーグ戦では97kg級は実施されないため影響はほとんどなく、ある意味での“追い風”。

 両チームの対戦では、拓大が57・65・120kg級、国士舘大が60、74kg級で有利か。70kg級と86kg級が勝負のかぎか。

 大東大は、昨年の春秋の新人選手権で74kg級と84kg級を連覇した村山貴裕を中心に、2強のどちらかを崩したいところ。

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《拓大》
 昨年、年間の3つの団体戦(東日本学生リーグ戦、全日本大学選手権と全日本大学グレコローマン選手権の大学対抗得点)で、いずれも優勝を勝ち取ることができなかった拓大。団体無冠に終わったのは2008年(当時は全日本学生王者決定戦を含めて年間4大会)以来。2000年代になってから、コンスタントに学生レスリング界の一大勢力を築いてきた拓大を知る人にとっては、寂しい結果に終わった。

 巻き返しを期す今シーズン、まずリーグ戦で優勝し、幸先いいスタートを切りたいところ。リーグ戦のシステムが変わったことにより、初日から勝負をかけねばならないチームも出てきたが、強豪がそろったD組もそう。西口茂樹部長も「(優勝候補と目される)山梨学院大との対戦のことを考えても、同じブロックの国士舘大に負けたら意味がない。初日がヤマ」と気を引き締める。まず、初日の第3試合で対戦する国士舘大戦に全力投球だ。

 今季の拓大は、65kg級の高谷大地(京都・網野高卒)と125kg級の園田新(滋賀・日野高卒)の2年生2人が安定した力を発揮しそう。この2人を二枚看板とし、先陣(57kg級)を切る西山凌代主将(香川・高松北高卒)、74kg級のスーパールーキー、浅井翼(京都・京都八幡高卒)の4選手がポイントゲッターとして期待される。

 しかし、国士舘大の74kg級は2012年学生二冠王の嶋田大育主将が出てくることが予想され、普通に考えれば新人の浅井では荷が重い。その場合は、70kg級の湯田敬太(香川・高松北高卒)、86kg級の岡嶋勇也(滋賀・栗東高卒)が踏ん張ることで乗り切りたい。

 最重量級を闘う園田は、本来はグレコローマンの選手だが、昨年のリーグ戦で4戦全勝をマークするなど、学生レベルならフリースタイルも十分に通用する。西口部長は「期待されて入学した弟(平=滋賀・日野高卒)が手術で戦列を離れたことで(注=JOC杯でひざを負傷)、弟の分まで頑張る自覚を持ってほしい」と奮起をうながした。

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《国士舘大》
 3年連続グループ3位の国士舘大は、今回はD組で拓大と同じグループに入った。和田貴広監督は「グループ1位にならないと優勝のチャンスがないので、なんとかグループ突破しないと」と気を引き締める。

 最大のライバルは、リーグ戦の優勝候補として近年、常に名が挙がっている拓大だろう。だが、和田監督の目には全大学が“ライバル”として映っている。「拓大と2強、という気持ちはありません。そのように思っていると足元をすくわれます」ときっぱり。予選グループ1位突破のためには、全試合ベストメンバーもいとわない心づもりだ。

 チーム状態は、大きなけがによる離脱選手はなし。「仕上がりは順調。チームが一丸となっている」と和田監督も満足げ。

 チームは2012年に2年生で74kg級の学生二冠王者になった嶋田大育(青森・青森商高卒)主将が引っ張る。嶋田は昨年、夏場にけがで全日本学生選手権を欠場。全日本大学選手権も2位と、けがとブランクによる影響があったのは否めない。しかし、和田監督は「すでにけがの影響はない状態」と、完全復帰をにおわせた。

 嶋田を絶対的エースに据え、57kg級の有延大輝(福岡・築上西高卒)、昨年全日本選手権60kg級で3位に入った阿部宏隆(茨城・鹿島学園高卒)、グレコローマン96kg級で学生3位の志喜屋正明(沖縄・浦添工高卒)らで白星を重ねていきたいところだ。

 和田監督は「団体戦だから、という戦略はありません。全員が勝って7勝することが目標。全員が勝ち星のためにひとつになって頑張れば、結果はついてきます」と全員勝利の方程式でリーグ戦を勝ち抜くことを誓った。